星降る夜に、あのラブソングを。
第 8 話 個人としての決断
結局、結論が出ない私と武内先生。
でも目先の問題については、どうするかはすぐに決めなければならない。
私の生活拠点のことだ。
そこで「費用は払う」と言ってくれた先生が、しばらくはビジネスホテルに泊まって欲しいと言い出した。というか、指示らしい。泊まりなさい、らしい。
費用なら親からの100万円があると言うと、「それはもしもの為に置いておきなさい」と言って、半ば無理矢理に私の銀行口座へ入金させられた。
何をするにも、先生は本気だった。
「柊木さん、おはよう」
「おはようございます」
休み明けの『サクラ学級』、登校すると既に武内先生が居た。
ビジネスホテルから学校に向かった私。
先生の姿を見ると、妙に安心感を覚える。
「ホテルどう、問題無い?」
「全く問題無いです。先生、本当にごめんなさい。お金のこととか、迷惑ばかりかけてしまいます」
「……謝らないでよ。迷惑なんて思っていないから」
先生は生徒机に座って仕事をしていた。
日頃は職員室でやっていることを、ここでやっている理由なんて……。
「……」
いつも先生は、私の考えを上回る。
私は自分の席に座り、今日を過ごす準備をした。
ここに来ると、両親に追い出されたことから、現在はホテル生活という現実まで全てが夢だったのではないか、そんな感覚がしてくるから不思議だ。
「…………」
窓の外を眺めて、少し雲が掛かった空を見上げる。
雨でも降るのかな。
何だか悲しそうな空が、妙に印象的だった。