星降る夜に、あのラブソングを。
ステージ発表では生徒会を中心として、各クラスや部活動など、様々な団体が活躍していた。
中でも軽音部は凄かった。さすが内山先生が顧問をしているだけあると思う。どの団体よりもレベルが高くて、思わず鳥肌が立った。
体育館での催し前半が終わると、生徒たちはフリータイムだ。各クラスの出店や早食い大会など、各自が自由に楽しむ。
私は生徒たちが解散する前に体育館を出て、今日は生徒立ち入り禁止となっている特別教室棟から動きを監視していた。
「……」
武内先生は用事があるとのことで、別行動。
まぁ、当たり前だ。
高校生にもなって担任がつきっぱなしなんて有り得ないからね。
呆然と立ち尽くし、どうするか考える。
しかし、ここにずっと立っていてもどうしようもない。
そう思い、私は空き教室棟に戻ることにした。
『サクラ学級』に戻ろう。そうしよう。
ゆっくりと歩き、空き教室棟の階段を上る。
基本的には誰もいない棟。
……な、はずなのに。
2階にある空き教室の前で、女子生徒が1人佇んでいた。
「……」
私の戻る場所は4階。
無視して先に行けば良かったのに。
妙に儚い彼女。
そして、誰も居ないはずの空き教室棟に居ること。その全てが気になり、つい立ち止まってしまった。
私の足音に気付いたその人。
勢いよく睨むようにこちらを見た後、直ぐに驚いた表情をして声を上げた。
「……あ、柊木さん」
「…………えっ?」
当たり前のように名前を呼ばれて驚いた。
私のことを知っている人がいるなんて。
その人は中学校の同級生という訳でも無さそうなのに……。
「何で知って……」
「私ね、1年2組の藤原真帆。柊木さんの後ろの席」
その名前を聞いて思い出した。
あれだ。数学が苦手で、早川先生が補習をしていたという藤原さんだ。
藤原さんは静かに外を眺めていた。
ここからは文化祭の様子なんて見えないのに。1人静かに、呆然と。
「……文化祭ってあまり好きじゃないんだ。最初は友達と回ってたんだけど、その子ったら彼氏の姿を見つけたらパーッと走り去っちゃって。それで、1人になったからここに来たんだ。この教室前が、私の駆け込み場所」
そう言って微笑んだ藤原さんは、何だか優しそうな表情をしていた。