星降る夜に、あのラブソングを。


 ホワイト・クリスマス。

 学校へ向かう為にアパートの部屋から出ると、ヒラヒラと舞っている雪が視界に入ってきた。


「……さっきまで、降っていなかったのに」


 今年は雪が降る頻度が多い。
 暑いよりはマシだけど。雪が降ると通学が大変だから、少しだけ勘弁して欲しいと願ったりして。


 そんなことを思いながら、学校に向かって歩き始める。

 武内先生はいつも私よりも先に出掛けるから、今はもう居ない。




 一人暮らしが始まって数ヶ月経った。

 武内先生のお陰で慣れない一人暮らしも、上手くいっている。



 親からは特に何も無いし。私も実家に寄り付かない。
 
 藤原さんには悪いけれど、テストは相変わらず学年1位だし。

 思っていた以上に、順調。



 当初の計画通り、私は“親の仕送りによる一人暮らし”として学校に申告している。

 なお、父親は長期出張で不在。

 母親はそれについて行った……という結構ギリギリな設定で、保護者面談なんかも回避中。



 まさか私の後ろに武内先生がいるなんて。

 誰も知らないし、誰にも言えない。




 そんな、ひとりぼっちの私だけど

 私の周りには色んな人が居て

 色んな形で、助けてくれている。

 最近はそう、つくづく実感しているんだ。

 

 “ひとりぼっち”なのに、“ひとり”じゃない。



 その感覚が、妙に不思議に感じることがある。




 とはいえ、やっぱりその殆どは武内先生だけど。



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