星降る夜に、あのラブソングを。
第11話 複雑なクリスマス
お昼になっても雪が止む気配は無い。
ヒラヒラと舞い続ける雪を眺めながら、お弁当を取り出す昼休み。
武内先生はまだ来ない。
そんなことを考えていると、突如大きな声で私を呼ぶ声が聞こえてきた。
「柊木さん!!」
「……え?」
勢いよく開いた扉から、焦ったような様子の武内先生が教室に飛び込んできた。
目を見開いて近付いてきた先生は、私の腕を握り席から立たせる。
「ごめん、至急の用事。“君は嫌かもしれない”けれど、“君じゃなきゃダメ”だ」
「……」
意味不明な言葉を最後に、教室から連れ出される私。
無言のままの武内先生はひたすら歩き続け、辿り着いた先は事務室前だった。
そこに立っている、見覚えのある人。
「お、お姉ちゃんっ!!」
「……」
中学校の制服を着た妹と弟だった。
2人は私が卒業した中学校に通う2年と1年。
今日も普通なら学校だと思うのだが。
何故ここにいるのだろうか。
「な……何。学校まで押し掛けて。帰りなよ」
「違う、お姉ちゃん聞いて!! お父さんとお母さんがね、車で事故に遭ってね……それでね、それでね……っ」
ぶわっと涙を溢れさせ、言葉が継げなくなる妹。
その様子を無言で見つめていると、弟も口を開く。
「2人とも重傷で、病院に今いる。さっき、おばあちゃんが病院の先生と話してくれたんだけど……長くないって」
「…………」
「でね、姉ちゃんにも来てもらえっておばあちゃんに言われて……。でも今住んでいる家も分からないし。それで、学校まで来た。今後のことを話すには俺らじゃまだ無理だから、姉ちゃんと話すって」
突然の話に、理解が追いつかない。
震える身体を抑えながらチラッと武内先生の顔を見ると、小さく頷いて「決めたら良い」と呟いた。
「…………」
散々私のことを放置して、挙句の果てに家から追い出した両親。
そんな両親の行動を誰よりも近くで見ていた、妹と弟。
関係無いおばあちゃんからの呼び出しとはいえ、今更……そんな都合の良い話、受け入れられる訳がない。
「……柊木さん、大丈夫?」
「……武内先生。全然大丈夫じゃないです」
様々な感情が胸の中で湧き上がり、自分の本当の思いというものが見つからない。
大方、妹と弟の面倒でも見るよう言われるのだろう。
散々見て見ぬフリをしてきた2人。
私が1人で除け者にされているところ、笑っていた……妹と弟。
「……おばあちゃんに伝えといて。柊木家には関わらないと。……大体、あんたら2人もよくここまで来れたよね。見て見ぬフリをして、笑っていたくせに……っ!!」
「……」
酷い姉だ。
そう思いつつ、表情は崩さない。
私の言葉を聞いた妹と弟は、2人ともが涙を流して大泣きをし始めた。
さすがに胸が痛む。
けれど、この2人も私に同じことをしてきた。
それに、こんなこと誰にも言えないけれど。
私、両親が事故に遭ったと聞いて真っ先に、何故かホッとしたんだ。