星降る夜に、あのラブソングを。


「ごめん、今日は遅くなる」


 朝、今日は早く帰ると言っていた先生はどこへ行ったのか。
 帰りのショートホームルームでそう言い残して教室から出て行った。


「……」


 昼休みに妹弟が来てから、どうも先生の様子がおかしい。
 私以上に何かを気にしているような様子が……どこか引っ掛かるが……。

 せっかくのクリスマス。
 先生が遅くなるならと思い、私は街中を少し歩いてから帰ることにした。


 イルミネーションやクリスマス飾りが施された街。
 周りには少しだけ浮かれた様子のカップルが居たりして。首に巻いたマフラーで口元まで隠して、宛も無く街を歩き続ける。

 すると、そこで見つけた可愛い雑貨屋。
 売ってある熊の置物が何だか可愛くて、先生に買って行くことにした。



「……武内先生」


 小声で名を呼び、ゆっくりと空を見上げる。
 やっぱり止む気配の無い雪は、ヒラヒラと変わらず降り続けていた。


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