星降る夜に、あのラブソングを。


 しばらく玄関で2人立ち尽くした後、先生に中へ入ってもらい、今日の出来事を話してもらった。

 昼休みに妹と弟が来た時、先生は妹と連絡先を交換していたらしい。
 何かあれば連絡をしてくれと伝えていたところ、5限目の途中にメッセージが来て『今日が山場』だとということを知ったとのことだ。


 妹は私に「病院に来るよう」伝えて欲しいと、先生に頼んでいたらしい。

 だけど、私は拒否をしている。
 それを間近で見ていたから、先生は私に言わず対応したとのことだ。


 先生が病院に向かった理由は両親の様子を見る為ではない。
 その場にいる親族に、私がされてきたことや現況を話すチャンスだと思ったかららしい。


 妹弟2人はおばあちゃんが面倒を見る。
 私は一人暮らし継続。それで話がまとまったとのことだった。


「……赤の他人が家庭の問題に首を突っ込むことには、酷く勇気がいったよ。だけど、僕が今の君を支えている旨を話すと、ちゃんと会話をしてくれた」
「ごめんなさい、先生。私が子供なばかりに」
「君が謝ることではない。悪いのはご両親だ。けれど、良かったよ。君の親族ときちんとお話ができて」
「……」


 そっと先生の体にもたれかかり、小さく溜息をつく。
 先生は腕を肩に回してくれ、優しく抱き寄せてくれた。


「……正直、ご両親の訃報を聞いてどう思った?」
「…………」


 少しだけ俯き、つい絨毯に視線を向ける。
 
 それなりに蘇る思い出。
 だけど、楽しい記憶を上回るくらいの苦しくて辛い記憶。


「……少しだけ、嬉しかった」


 最低な私の一言。
 自分の言葉に思わず口角を上げると、先生は私の体をまた強く抱きしめた。



 クリスマスがもうすぐ終わる。

 結局クリスマスらしいことはできなかった。



 楽しいホワイト・クリスマス。……になるはずだったのに。

 両親の命日となってしまったこの日。
 私と先生にとって、複雑なクリスマスとなってしまった。



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