星降る夜に、あのラブソングを。
武内先生と内山先生、凄かった。
語彙力が無い私は、その程度の言葉でしか表現できないけれど。
本当に凄かった。
感動して止め処なく溢れる涙を拭うこともせず、呆然と2人を眺める。
ピアノを弾き終えた武内先生は、ゆっくりとピアノ椅子から立ち上がり、そのまま私の元へやってきた。
そして、無言で抱きしめられる――……。
「ちょっと。せ、先生っ。内山先生が……」
「良いんだ。彼女は知っているから」
「えっ?」
ギターを持ったままの内山先生は、ニッと口角を上げて微笑んだ。「武内、すぐ顔に出るから」と言いながら目線を外し、ギターをケースの中にしまい始める。
武内先生は、私をギューッと強く抱きしめて離さない。
その温かさに、また涙が零れた。
「武内な。ずーっと、どうすればお前のことを喜ばせられるか、そればかりを考えていたんだ」
「……」
「先生が教師を辞めると話した時、最後にセッションをしようという話になった。それで、その場に柊木も呼んで聴かせたら喜んでくれるのではないか。そういう結論に至ってな」
「それで……ショートホームルームをすっぽかした」
「……ふふっ」
自然と笑いが零れる。
どうして今日なのか。
どうしてこの時間なのか。
色々と聞きたいことが湧き出てくるのに、言葉は何1つ出てこない。
「柊木。この1年、本当に大変だっただろうけど、お前は強い。お前は……頑張っている。そこは自信を持て。英語も点数良いしな」
「内山先生……」
「だから、先生も柊木に負けないくらい頑張ってくる。置いて行かれた『Crazy Journey』に追いつけるくらい、めちゃくちゃ頑張ってくる。……そう思わせてくれたのは、軽音部のみんなと、お前だ。本当に、感謝しているぞ」
「……そ、そんな。私は何も……」
ギターを置いて、私たちの方に歩み寄ってくる内山先生。そして私を抱きしめたままの武内先生を引き剥がして、今度は内山先生が抱きしめてくれた。
「なっ、内山先生! 邪魔しないで!」
「うるせぇなぁ。柊木と女同士の時間、邪魔すんな? 現状Out of placeなのはお前だ、武内」
「場違いって言った!? 酷すぎる!!」
なんて言いながら、武内先生は凄く嬉しそうな表情をしていた。
「お前の頑張る姿が、誰かに響く。少なくとも、先生と武内には響いている」
「……」
「お前は強い。大丈夫、その強さはきっと何事も乗り越えられる。……武内には、素直に甘えとけ。今はいっぱい助けて貰って、今度は武内がジジイになった時に助けてやれば良いんだから」
「ジジイ!?」
内山先生の言葉に飛び跳ねる武内先生。
その様子が面白くて再び笑いを零すと、先生2人も笑ってくれた。
嬉しい。
優しい言葉が、本当に嬉しかった。
「……ありがとうございます、内山先生」
そう呟きながら内山先生に強く抱きつく。
「柊木、お互い頑張ろうな」
「……はい」
最後、少しだけ震えていた声。
そんな内山先生も、とても温かかった。