星降る夜に、あのラブソングを。


「柊木さん。さっき妹さんから連絡が来たよ」
「……えっ?」


 昼休み、お弁当を持って現れた武内先生の第一声がそれだった。

 妹というワードに、湧き上がる嫌悪感。
 ていうか、何で当たり前のように武内先生と連絡しているの?

 それにまた、イラッとしてしまう。


「……何でしたか、用件」
「簡単に言えば、来てくれって。おばあちゃんが話したがっているからって」
「嫌です」
「まぁ、そう言わずに」
「嫌です。私、柊木家には関わらないと決めているのです」
「……」


 先生は困ったような表情をしながら、私の隣に座った。

 うーん、と唸りながらお弁当を開く。
 どうも……嫌では済まないのだろう。

 先生は、無言でお弁当を食べ始めた。

 何も言わない。
 それにまた、不安を覚える。


「……先生」
「柊木さん。多分おばあさんは、柊木家がどうこうっていう話をしたいわけじゃないと思うよ。単に孫に会いたい。それだけじゃないかな」
「けど……妹たちにも会いたくないですし……」
「その気持ちも分かる。だから、無理にとは言わないけどさ」


 少し考えてみたらどうかな。そう言葉を継いで、またお弁当を食べ進め始めた。

 親不孝に重ねて、祖母まで不孝にして良いものか。
 そう問う自分もいるが、柊木家が許せない気持ちも強い。とはいえ、おばあちゃんには関係ないことも……痛いほど理解している。

 私は、私自身の思いが……本当に分からない。


「……」


 箸を持ったまま固まり考える。
 そんな様子を見ていた先生は、フッと小さく微笑んだ。


「僕がおばあちゃんの家まで連れて行ってあげるし、一緒に居てあげる。何かあれば僕が君を守るし、どうしても帰りたければすぐに帰ればいい。それでも、行かないかな?」
「そ、そんなの、迷惑に——……」
「また言った。……だから、迷惑なんて無いって」


 椅子から立ち上がり、そっと近づいてきた先生は軽くデコピンをする。

 優しくて、やっぱり痛みのないデコピン。
 微笑んでくれている先生の表情が、とても優しそうだった。


「行くだけ行ってみようよ。後のことは、着いてから考えれば良いのだから」
「……」
「大丈夫、僕が一緒に居る」
「……分かりました」


 その一言に、今日1番の笑顔を見せてくれた先生。
 そんな彼の強い言葉に押され、私はおばあちゃんの家に行くことを決めた……。


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