星降る夜に、あのラブソングを。
「………」
帰ろうにも帰れなくて。
教室に居たくなくて。
でも、頼れる教師なんて1人もいなくて。
どうすれば良いか分からない私は、中学校の裏門付近に座り込んでいたんだけど……。そんな時、声を掛けてきてくれた人がいた。
「……お前、授業は?」
「……」
中学校の隣にある県立桜川工業高校。
金網フェンス1枚で仕切られているだけの高校の敷地側で、その人は立ってタバコを吸っていた。
「……タバコ、臭い」
「……ごめん」
スーツを着て、眼鏡を掛けた背の高いおじさん。そのおじさんは急いでタバコを片付けて、眼鏡をクイッと押し上げた。
「で、授業は?」
「……別に。おじさんには関係ありません」
「………」
居場所を変えよう……。そう思った時、おじさんはまた声を発した。
「俺、桜川工業高校で数学教師やってる。大体この時間にここでタバコ吸ってるから。話くらい聞いてやる」
「結構です」
「……じゃあ、授業くらいちゃんと受けとけ」
「お節介です」
私はその場から立ち上がり、校舎の方に向かって歩き始める。
むかつく。
本当に全ての人に対してイライラしてしまう。
そもそも私、何かした?
虐められるようなことした?
友達は確かにいないけれど、虐められるようなことをした記憶は無い。
「……」
苦しくて、悲しくて、辛かった。
そんな、中学時代。
複雑な感情を抱えた私の、“トラウマ”までの“第一歩”の話――――…。