未定
「面倒なことを聞くな。俺がやめろと言ったらやめろ」

結婚話を順調に進めたいので、草尾を不機嫌にさせたくない。

けれどもこの件だけはわかったと言えなかった。

(勇吾は兄弟がいないから、私の気持ちを理解できないのかも)

残念だが妹については相談しない方がいいと判断し、曖昧に笑って流そうとした。

頷かない明日香をジロッと睨んだ彼が、四杯目のビールを一気に半分飲んで話しだす。

「お前が一杯、飲み終えるまで待ってやろうと思ったけどやめるわ。大事な話がある」

「う、うん」

彼の両親への挨拶の日程や、新居探し、結婚式についての相談だろう。

煩わしそうな顔をしているのが少々気になったが、高まる期待に背筋を伸ばした。しかし――。

「お前とは別れる。当然、結婚の話もなしだ」

明日香は目を見開いた。

ハンマーで頭を殴られたような強いショックを受け、声が出ない。

(嘘、でしょ……?)

うまくつき合えていると思っていた中での突然の別れ話は、まさに青天の霹靂だ。

冗談だと思いたかったが草尾は真顔で、本気を悟って慌てた。

「私、なにかした? 仕事のこと?」

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