未定
最初は感謝してくれたのに、いつからか当たり前のようになって、もっと丁寧にやれと叱られることもあった。

無料で使える専属家政婦ほしさのプロポーズだったと知り、愕然とする。

あの時、涙を流して喜んだ自分を哀れに感じた。

「ひどい……」

「優しいだろ。お前が未練なく別れられるよう、本心を明かしてやったんだから。そういうわけでお前とは終わりだが、仕事のサポートはこれまで通りに頼むな。残りのプラン案と見積もりも早めに仕上げろよ」

別れてもまだ仕事を押しつけようとする非情な彼に心をえぐられる。

(私と付き合ったのって、仕事を手伝わせるため? 最初から愛情はなかったのかも。この三年間、私はなんのために頑張ったんだろう)

頭に描いていたウエディングドレスや新居のイメージ、いつか子供を産んであたたかい家庭を作りたいという夢がひび割れ、ガラスのように砕け散った。

空しさに襲われてガックリとうなだれると、草尾が席を立つ。

「これで好きなだけ飲めよ。手切れ金、込みな」

一万円札一枚を無造作にテーブルに放り、振り向くことなく店を出ていった。

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