未定
二十分ほどしてマティーニの三杯目を注文したところで、ふいに横から声をかけられた。
「顔色が悪い。酒に強いわけじゃないんだろ? それ以上はやめた方がいい」
「えっ?」
空席をひとつ挟んだ隣からこっちを見ているのは、ネイビースーツの男性だ。
年齢は三十代半ばくらいだろうか。
明日香が入店した時にはすでにその席にいたような気がする。
ビジネスヘアに整えられた短い黒髪で前髪は額に斜めにかかっており、凛々しい眉にアーモンド形の紅茶色の目、鼻や唇は形がよく、俳優顔負けの容姿をしていた。
(どこかで見たような……?)
かなり酔いが回っているため、すぐには誰かわからない。
芸能人だろうかと思いつつ、揺れる視界の中で焦点を定めようと頑張っていると、すぐ隣に席を移った彼がマスターに水を注文した。
「菅野さん、水を飲んで」
(どうして私の名前を? 今日はマスターにも呼ばれていないような……)
カクテルグラスを遠ざけられ、代わりに水の入ったグラスを握らされた。
近い距離で目が合うと、うまく回らない頭でもようやく気づいた。
「広瀬常務、ですか?」
「そうだ」
「顔色が悪い。酒に強いわけじゃないんだろ? それ以上はやめた方がいい」
「えっ?」
空席をひとつ挟んだ隣からこっちを見ているのは、ネイビースーツの男性だ。
年齢は三十代半ばくらいだろうか。
明日香が入店した時にはすでにその席にいたような気がする。
ビジネスヘアに整えられた短い黒髪で前髪は額に斜めにかかっており、凛々しい眉にアーモンド形の紅茶色の目、鼻や唇は形がよく、俳優顔負けの容姿をしていた。
(どこかで見たような……?)
かなり酔いが回っているため、すぐには誰かわからない。
芸能人だろうかと思いつつ、揺れる視界の中で焦点を定めようと頑張っていると、すぐ隣に席を移った彼がマスターに水を注文した。
「菅野さん、水を飲んで」
(どうして私の名前を? 今日はマスターにも呼ばれていないような……)
カクテルグラスを遠ざけられ、代わりに水の入ったグラスを握らされた。
近い距離で目が合うと、うまく回らない頭でもようやく気づいた。
「広瀬常務、ですか?」
「そうだ」