未定
「そ、そんなことしていただくわけには。大丈夫です。ご心配おかけしました。失礼します」
ショルダーバッグを肩にかけて急いでドアへ向かう。
ローヒールのパンプスは履き慣れたものなのに、足がもつれてつんのめるようにドアにぶつかった。
「菅野さん!」
背中にかけられた広瀬の声に振り向けず、恥ずかしさから逃げるように店を出る。
階段を上ってビルを出ると、さらに酔いが回って真っすぐに歩けない。
ふらつきながら必死に足を前に進めていると、追ってきた広瀬に腕を掴まれた。
驚く明日香の目に、端整で真剣な顔が映る。
「危なくてひとりでは帰せない。不本意だと思うが、送らせてくれ」
「広瀬常務……」
重役に昇進してから今日まで、彼の姿を見かけたこともなかった。
話すのも二年ぶりなのに、かつてのように気遣われると思い出が押し寄せてくる。
(私がもう新人じゃなくなっても、褒めたり励ましたり心配したり、いつも気にかけてくれていた……)
『会議用の資料、よくできていた。おかげで説明しやすかったよ、ありがとう』
ショルダーバッグを肩にかけて急いでドアへ向かう。
ローヒールのパンプスは履き慣れたものなのに、足がもつれてつんのめるようにドアにぶつかった。
「菅野さん!」
背中にかけられた広瀬の声に振り向けず、恥ずかしさから逃げるように店を出る。
階段を上ってビルを出ると、さらに酔いが回って真っすぐに歩けない。
ふらつきながら必死に足を前に進めていると、追ってきた広瀬に腕を掴まれた。
驚く明日香の目に、端整で真剣な顔が映る。
「危なくてひとりでは帰せない。不本意だと思うが、送らせてくれ」
「広瀬常務……」
重役に昇進してから今日まで、彼の姿を見かけたこともなかった。
話すのも二年ぶりなのに、かつてのように気遣われると思い出が押し寄せてくる。
(私がもう新人じゃなくなっても、褒めたり励ましたり心配したり、いつも気にかけてくれていた……)
『会議用の資料、よくできていた。おかげで説明しやすかったよ、ありがとう』