未定
でも今はどうにでもなれという心境で、二分もかからずに返事をする。

「常務のご自宅に連れていってください」

明日香の選択が予想外だったのか、彼がわずかに目を見開いた。

「後悔しない?」

「はい」

「わかった」

広瀬が告げた住所へとタクシーが走り出す。

なにも話さず肩を抱かれること二十分ほどして、麻布の高層マンション前で止まった。

支えられて足を進め、セレブな雰囲気のエントランスを抜けてエレベーターで上がる。

彼の自宅のドア前に着くと、もう一度、意思を確認された。

「いいのか?」

「はい」

(もう、なにも考えたくない……)

暗い玄関に入ると、ドアが閉まった途端に顎をすくわれ、唇を奪われた。

それは水音が立つほど深いキスで、驚いているということは、彼なら優しいキスをしそうだと無意識に思っていたのだろう。

激しいキスで息が上がり、苦しくなって顔を背けても、すぐに彼の唇が追ってくる。

唇を重ねながら歩みを促され、廊下から寝室へ入る間に服を半分脱がされた。

窓の外からのわずかな光で、広いベッドの輪郭が見える。

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