未定
荒っぽいキスとは違い、明日香を優しく押し倒し、体重をかけないようにまたがった彼に気遣われる。

「気分は? 具合が悪ければやめるから言ってくれ」

その優しさが傷ついた心にしみて泣きそうになる。

「やめないでください」

(めちゃくちゃにしてほしい)

失恋を悲しむ余裕もないほどに。

はだけた彼のワイシャツをぎゅっと握ると、再び口を塞がれて舌をからめとられた。

標準よりやや大きな胸をまさぐられ、体の中心が火照りだす。

男らしい指で潤う部分をかき回されると、快感に身をよじった。

「ああっ」

一糸まとわぬ体の隅々まで快感を与えられてから、ひとつに繋がりリズムを刻む。

体をビクビクと震わせると体勢を変えて攻められ、ウブでもないのに翻弄された。

(こんなの初めて)

頭が真っ白になれば、失恋のつらさを忘れられる。

それを期待しているのに、自分を捨てた男の顔がチラチラと浮かんで、突き抜けられない。

(あんなに尽くしたのにどうして捨てるの? 好きになった人って誰? こんなに簡単に捨てるなら、プロポーズなんかしないでよ!)

「なにも考えたくないのに、勇吾の顔が……」

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