懐妊一夜で、エリート御曹司の執着溺愛が加速しました
切れ長の目に薄めの唇、短めの爽やかなビジネスヘア。高身長でスタイルがよく、イケメンだと噂され女性社員から人気があった。

しかし営業職には向いている強引で強気な彼の性格を、苦手とする人も少なくないようだ。

草尾は濃紺のスーツのジャケットを脱いで片腕にかけており、もう一方の手には黒革の鞄をさげている。

営業で外へ出かけ、戻ってきたばかりのようで、額に汗を浮かべていた。

七月の半ばを過ぎて真夏の蒸し暑さは容赦なく、外回りの営業職の社員たちは大変そうだ。

「暑い中、おつかれさまです」

笑顔で労ったのに顔をしかめられ、返ってきたのは嫌味だった。

「お前はいいよな。一日中、涼しい場所にいられて」

ぞんざいな口の利き方をされるのは、交際関係にあるためだ。

二課内での配置転換で草尾の仕事を補佐するようになったのは、三年ほど前になる。

明日香の仕事のスタンスは、『頼まれたことは断らない。気づいたことは頼まれる前に準備しておく』である。

それが気に入られて草尾によく話しかけられるようになり、食事にも誘われた。

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