未定
(そうだ、私、広瀬常務のご自宅にお邪魔したんだ)

寝室に彼の姿はなく、やけに静かだ。

体を起こして毛布から出ると、なにも身に着けていないことに気づいて、両手で胸元を隠した。

(酔って、やけになって、抱かれてしまった)

モラルやコンプライアンスは大事にしてきたつもりだったのに、まさか自分が?という心境だ。

しかし不思議と昨夜の情事をなかったことにしたいとは思わない。

今強く感じるのは恥ずかしさで、昨日着ていた下着や服がたたまれてベッドの横に置いてあるのを見て、さらに赤面した。

急いで服を着て、乱れているベッドを整えてから廊下に出た。

左には玄関あり、右にはリビングに続くと思われる白いドアが見える。

広瀬と顔を合わせるのが気まずいが、お礼も言わずに帰る性格ではなく、爪先を右に向けた。

緊張しながらドアを開けると、明るい日の差し込む広々とした空間が開ける。

落ち着いた雰囲気のリビングはダークブラウンと白と黒でまとめられ、家具は量販店で売っているものと明らかに違って高級感があった。

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