未定
顔に表れていなかったが、きっと彼も昨夜は結構酔っていたのだと思う。

女性として魅力に乏しいのは自覚している。

しかも部下と関係を持って、その後、しつこくつきまとわれたりしたら困るのは彼なのだから。

それなのに、プライベートの連絡先を教えてくれたのが不思議だった。

名刺を見ながら困惑していたが、少し考えて納得できる答えを見つけた。

(口止め、かも)

立場上、言いふらされると困るから、一夜の関係を誰にも話さないという約束を取りつけたいのかもしれない。

それならばと置いてあったペンで、名刺の裏に小さな文字で返事を書く。

『ご迷惑をおかけしました。泊めていただき感謝しております。朝食もありがとうございました。昨夜のことは他言しないとお約束しますのでご心配には及びません』

そのあとは椅子に座って朝食を口にする。

食欲はまるでなかったが、せっかく作ってくれたものをそのままにはできなかった。

ふわふわのオムレツもスープも、自分で作るより遥かに上手で、二日酔いでなければもっと美味しく食べられたのにと残念に思った。

< 33 / 34 >

この作品をシェア

pagetop