未定
食器は洗って片づけ、忘れものがないかを確かめてリビングのドアノブに手をかける。
メモ用紙はショルダーバッグにしまったが、名刺はダイニングテーブルに置いたままだ。
ドアを開けると後ろ髪を引かれるような気持ちがして、思わず振り返る。
(あの名刺を持ち帰ったら、連絡を取り合う関係になれる……?)
失恋したばかりで次の恋を始める心の余裕はないし、広瀬とつき合いたいなんて身の程知らずな希望も持たない。
それでもほんの少しだけ、彼と繋がっていたいと思ったのは、上司としての彼の人柄に惹かれているせいだ。
彼を慕うその気持ちに即座に蓋をする。
(これ以上の迷惑はかけられない。他言しない約束はしたから、広瀬常務も安心してくれるはず)
顔を前に向け、玄関の外まで出た。
電子錠が閉まる音がして、これでいいのだと自分に言い聞かせる。
マンションの外へ出ると、暑い日差しに目を細めた。
(いい天気。昨日ほど胸が痛くない。二日酔いも大丈夫。帰ったら、勇吾の私物を片づけよう。私って案外、強い?)
片手で日差しを作って真っ青な空を見上げ、口角を上げると、前向きな気持ちになれた。
メモ用紙はショルダーバッグにしまったが、名刺はダイニングテーブルに置いたままだ。
ドアを開けると後ろ髪を引かれるような気持ちがして、思わず振り返る。
(あの名刺を持ち帰ったら、連絡を取り合う関係になれる……?)
失恋したばかりで次の恋を始める心の余裕はないし、広瀬とつき合いたいなんて身の程知らずな希望も持たない。
それでもほんの少しだけ、彼と繋がっていたいと思ったのは、上司としての彼の人柄に惹かれているせいだ。
彼を慕うその気持ちに即座に蓋をする。
(これ以上の迷惑はかけられない。他言しない約束はしたから、広瀬常務も安心してくれるはず)
顔を前に向け、玄関の外まで出た。
電子錠が閉まる音がして、これでいいのだと自分に言い聞かせる。
マンションの外へ出ると、暑い日差しに目を細めた。
(いい天気。昨日ほど胸が痛くない。二日酔いも大丈夫。帰ったら、勇吾の私物を片づけよう。私って案外、強い?)
片手で日差しを作って真っ青な空を見上げ、口角を上げると、前向きな気持ちになれた。