未定
大変だったのだと推測できるので、労わらなければと気遣った。

「私と違って草尾さんは大変だと思います。おつかれさまでした」

すると今度は舌打ちされた。

「まだ仕事は終わってないんだよ。過去形にするな」

「そうですね。すみません」

「水。自販機のやつな」

「はい」

それで草尾の機嫌が直るなら、ペットボトルの水くらい喜んで買いにいく。

(契約が取れなくて落ち込んでいるんだ。私が支えてあげないと)

きっとストレスをぶつける先が明日香以外にないのだろう。

彼のワガママも横柄さも、恋人への甘えだと思えば我慢できた。

(このくらいで喧嘩していたら、一緒に暮らしていけないもの)

今はお互いのひとり暮らしの家を行き来して半同棲状態だが、今年の四月にプロポーズされて結婚予定である。

けれども仕事が多忙のため、彼の両親にはまだ紹介されていない。

明日香の両親への挨拶は不要だ。

離婚家庭で育ったので父がどこにいるのか知らず、母は病で一昨年亡くなったからだ。

結婚して子供を産み、温かい自分の家庭を作るのが明日香の夢である。

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