未定
父親のいる家庭を羨ましく思って育ち、母親も失ってからは寂しく、結婚願望は人より強いかもしれない。

早く結婚したいのに、プロポーズから三か月が過ぎても具体的な話ができずにいた。

(忙しいんだから、仕方ないよね)

買ってきた水を草尾に渡し、自分の席に戻る。

ノートパソコンの画面に視線を戻してすぐ、新着メールに気づいた。

開くと草尾からで、【やっとけ】という一文の下に、箇条書きで七件分の顧客へのプラン案と見積もり書の作成が指示されていた。

その内、三件が今日中という期限である。

(こんなに?)

営業スタッフをサポートするのが明日香の仕事ではあるけど、草尾がやるべき業務まで押しつけられるのが常態化していた。

それは長く付き合うほどひどくなり、今では彼のデスクワークの半分以上を明日香が担っている。

頼まれた仕事は断らないというスタンスの明日香でもさすがに疑問に思い、一年ほど前にやんわりとやめてほしいと伝えたのだが、こう反論された。

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