未定
自分が頑張ればいいと決めて指示された仕事をすべて引き受けることにし、メモを取ったあとに彼からの二通のメールを消去した。

社用アドレスなので上司のチェックが入る可能性がある。

明日香が過剰に草尾の仕事を手伝っていると知られたら交際関係がバレるからと、以前、彼に言われてのことだ。

(大事な話って?)

メールの最後の一文が気になった。

もしかすると結婚に向けてやっと具体的な話をされるのではと期待し、胸が高鳴った。



集中を切らさずパソコン画面に向かい続けること数時間して、時刻は二十一時になる。

できるだけ残業を減らそうという社の方針により、二課で残っているのは五人だけ。

今日は金曜なので、飲みにいく相談をしながら定時で退勤した人たちもいた。

フロアの照明は残業中の社員の真上以外は落とされて、薄暗い。

(あともう少しで終わる。早く勇吾と合流したい)

彼は三十分前に退勤した。

手伝ってほしかったが、『引き受けた時点でそれはお前の仕事だ』と言われてしまった。

席を確保しておくとも言われ、一足先に馴染みのバーに向かったのだ。

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