カオルちゃんと薫くん






高校1年生の春。


クラスでは何となくグループも出来て、休み時間を一緒に過ごしたり、お弁当を一緒に食べる友達もできた。


「サエちゃん肌も髪もめちゃめちゃ綺麗だよねー!特別なケアしてるの?」


お昼休み、お弁当を食べ終わりお手洗いで身だしなみを整えながら鏡越しにそう言ったのはチアキ。


最近はチアキとほとんど一緒にいる。


同じクラスになって最初に声を掛けてくれた女の子で、物腰も柔らかく、敵が少なそうな子。


この時間帯のお手洗いは混み合うので、私たちは足早に廊下に出た。


「うーん、日焼け止めちゃんと塗ったりとかかな?日焼け止めは質より回数が大事なんだって。もちろん髪もね」


「えー!そうなの?知らなかった!詳しいね」


「私が詳しいっていうか…」


何て答えようかと腕を組んで顎に手を置いた時、背中にズッシリと重みを感じてよろけた。


「サーエちゃん!日焼け止めの話ー?大事だよねぇ塗り直し」


ギョッとする私をよそに、チアキは「あ、カオちゃんだ!やっほ」なんて手を振った。




「ちょっと!カオル、重いからっ」

私がそう言って無理やり距離を取ると、

「えー。サエちゃんってば女の子に重いとか失礼じゃなーい?」

と、カオルはどこで覚えたのかモジモジクネクネと拗ねたポーズをしてみせた。


「カオちゃんやばぁ!可愛い!推せるーっ」

チアキは大人しそうな見かけによらずミーハーなところがあって、カオルを見ると一段階テンションが上がる。

「ええ?そう?ふふっ、こう?どう?こんな感じ?」

「きゃー!眩しすぎ!カオちゃん天使!」


パシャパシャとスマホで撮影会をするチアキとカオル。

楽しそうで何より。







でも。

“女の子”に失礼か。


確かにそうなんだけど。


カオルはモデルのようにスラッと背が高いし。
毎日変わるヘアスタイルも手抜きなし。

メイクも上手で、仕草も声も抜かり無い。


周りの女子たちは、そんなカオルに色めいた視線なんて向けない。


向けられるのは憧れと羨望の視線。


学年の注目の的。


その隣にいる私は、ただの友人Bってところだろうか。



「サエちゃん」


教室に戻ろうと踵を返した私を引き止めたカオル。


「今日は火曜日だから♪よろしくね」


カオルの見慣れた100点満点のウインクに、思わず私の眉間にはシワが寄ったけれど、周りには悟られないように笑顔で「ハーイ」と手を振った。





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