📚 本に恋して 📚    第七回:『心の窓』 沢木耕太郎著
第五話:ワインに聴く

『聴く、聞く、利く。ワインは言葉より心で味わって』

著者がマダムに招待された時の話が紹介されています。
それは特別な招待でした。
なんと、1933年から1990年までのシャンベルタン(ルロワ社のブランド)を味わい尽くすイベントだというのです。
これには驚きました。
58杯のワインを試飲するというのですから。
余程の覚悟で臨まなければなりません。
それに、粗相をしないように気をつけなければなりません。
酔っぱらうようでは参加する資格がないからです。
著者は気を引き締めて臨んだことでしょう。マダムの言葉を胸に刻みながら。

「静かに静かにワインが語るのを聴きなさい。ワインが過ごしてきた歳月が、そこに幾層もの香りの(ひだ)を作り、空気に触れてのびやかに自らを解き放つのを聴きなさい。心で聴く人にだけワインは雄弁です」

当日、100人の招待客に特別なワインが振舞われたそうです。
う~ん、羨ましい。


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