📚 本に恋して 📚    第七回:『心の窓』 沢木耕太郎著
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①『しかられて』
(フランスのノルマンディー海岸から車でパリへ向かう途中で立ち寄ったカフェテリアでのひとコマ)

なんとも言えない表情の小さな男の子が訴えるような目で誰かを見つめています。
小さな手には紙コップ。
父親が飲んでいたコーヒーのようです。

実は、カフェインが入っているので母親から「飲んではダメ」ときつく釘を刺されていたのですが、母親がトイレに立った時、父親がそっとコップを渡したのです。
喜んだ男の子は口に含んだのですが、何故か母親はすぐに戻ってきて、それを見つけ、『だめでしょ!』と叱ったのです。
男の子は驚きの余り、飲み込むこともできず、上目遣いで母親を見つめました。
その一瞬を捉えた写真がすべてを物語っています。
お人形さんのような可愛い顔の男の子が固まりながらも、「どうして?」というような表情を浮かべている姿が愛らしくて、思わず見つめてしまいました。

小さな子は大人のすることを真似したがるものですが、なんでもさせてもらえるわけはなく、これからいっぱいこういうシチュエーションに出くわすのだと思います。

寛大な親、厳格な親、理解のある親、理不尽な親、いろんな親の元で子供は育つわけですが、厳格な母親と寛大な父親の元で、この子はどういうふうに育っていくのでしょうか。
そんなことを考えてしまう写真です。
タイトルも秀悦だと思います。


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