📚 本に恋して 📚    第七回:『心の窓』 沢木耕太郎著
④『電話ごっこ』
(フランスのリヨン駅で出会ったひとコマ)

二人の幼子が駅の公衆電話で、受話器を耳に当てている写真が目を引きます。
兄妹で電話ごっこをしているようです。
母親がその後ろで電話をかけています。
それを真似しているのでしょう。

楽しそうに遊んでいましたが、突然、妹が泣き出しました。遊んでいるうちに受話器のコードがこんがらがってしまい、どうにも手に負えなくなったのです。

そこで、文章は終わっています。
でも、続きがあるはずです。
早速、想像の世界に入りました。

泣いている妹を見て、お兄ちゃんはどうしたのでしょうか。
間違いなく助け舟を出したはずです。
「大丈夫だよ」って声をかけて、こんがらがったコードを元に戻したのではないでしょうか。そして、「ほら、直ったよ」って受話器を妹に渡して、「もしもし」って呼びかけたような気がします。
もちろん、妹は大喜びで、ニコニコしながら電話ごっこを続けたに違いありません。

それとも、電話を終えた母親がコードを直してくれたのでしょうか。

それとも、遊びを終わらせて、電車に乗るためにホームへ急いだのでしょうか。

それとも……、

想像が膨らみますが、やっぱり、お兄ちゃんが助け舟を出した方に一票を投じたいと思います。そう思いたくなるほど、お兄ちゃんが優しい表情を浮かべているからです。
「妹は僕が守る!」
頼もしいお兄ちゃんのはずです。


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