📚 本に恋して 📚    第七回:『心の窓』 沢木耕太郎著
⑥『やさしい手』
(フィンランドのヘルシンキの駅の出口でのひとコマ)

ベビーカーを押している母親と、ブルーと赤のレインコートらしきものを着ている幼い兄妹の写真なのですが、お兄ちゃんの姿がピンボケになっています。動いているところを撮った写真のようです。

読んで、理由がわかりました。
列車から降りてきた親子が立ち止まったと思ったら、いきなり母親が小さな女の子に向かって、何かきつい口調で叱り始めました。わがままなことを言ったのかもしれませんが、母親に叱られた女の子はみるみる表情を歪め、泣き顔になりかけます。
それを救ったのがお兄ちゃんでした。
女の子の背中にそっと手を伸ばし、撫でるように触れてあげたのです。
すると、女の子は泣かずに我慢することができました。
ほんのちょっとしたことですが、自分の味方になってくれたお兄ちゃんの優しさに慰められたのでしょう。

「わがまま言わないの!」
「なんど言ったらわかるの!」
「いいかげんにしなさい!」
親はつい、このような言葉を口にしてしまいます。
でも、それは言ってはいけない言葉です。
幼い心に傷をつけてしまうからです。

子供が小さい時は親も若いので、包み込むような言葉を投げかけることができません。
それは仕方のないことですが、でも、自分がそんなことを言われたらどう思うだろうか、と考えてみると、ぐっと我慢できるかもしれません。

言うは易く行うは難し、ですが、あの時、あんなことを言うんじゃなかった、と将来後悔しないためにも心がけたいですね。


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