妹と駆け落ちしたあなたが他国で事業に失敗したからといって、私が援助する訳ありませんよね?

18.仲良きことは

「お久し振りですね、アドール侯爵令息」
「リヴェルト様、お久し振りです」
「少し見ない間に、大きくなられましたね。なんというか、次期侯爵としての風格が感じられます」
「そうでしょうか? そう言っていただけると、こちらとしても嬉しいですね」

 アドールとリヴェルト様は、なんだか親しそうに会話をしていた。
 ヴェレスタ侯爵家とロナーダ子爵家は、前々から交流があったと聞いている。そういった事情もあって、二人の間には既に関係性ができているということだろうか。

「しかし、まさかあなたがこちらにいらっしゃるとは思っていませんでした」
「ええ、私もですよ。父上から命令された時は驚きました。しかしながら、来て良かったと思っています。どうやらヴェレスタ侯爵家は、危機的状況にあるようですからね」
「そうですね。由々しき事態です」

 リヴェルト様の言葉に、アドールはゆっくりと頷いた。
 その顔は、当然のことながら暗い。そういった表情を見ていると、私も少し苦しくなってくる。

「アドール侯爵令息、辛いのはわかります。ただ、今は嘆いていても仕方ない状況です。どうか気持ちを強く持ってください。あなたは誇り高きヴェレスタ侯爵家の後継者なのですから」
「……そうですね。リヴェルト様に、情けない姿を見せる訳にもいかないですからね」

 リヴェルト様は、アドールの肩に手を置いて、ゆっくりと言葉を発していた。
 その言葉によって、アドールの表情は晴れた。どうやらリヴェルト様のことを、結構慕っているようだ。
 貴族であり同性であるということが、やはり大きいのだろうか。なんというか、私よりも効き目があるような気がする。

「……フェレティナ様、どうかされましたか? 何やら視線を感じますが、私に何か?」
「いえ、なんでもありません」

 正直な所、少し複雑だ。アドールが元気を出してくれるなら嬉しいのだが、どうしても自分と比べてしまう。
 しかし、そんなことで落ち込んでいてもいいことはない。これからのこともある訳だし、気持ちを切り替えておかなければならないだろう。

「さてと、アドール、リヴェルト様は私達に協力してくれるそうよ?」
「そうなのですね。ありがとうございます、リヴェルト様」
「いえ、これは父上の命令ですから、お礼なら父上に言ってください」
「まあ、やるべきことは色々とあるし、早速行動するとしましょうか」
「はい……フェレティナ様、リヴェルト様、よろしくお願いします」

 アドールは、私とリヴェルト様に対してゆっくりと頭を下げてきた。
 それに対して、私達はゆっくりと頷く。これからまた、忙しくなる。気を引き締めて、ことにあたるとしよう。
< 18 / 72 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop