妹と駆け落ちしたあなたが他国で事業に失敗したからといって、私が援助する訳ありませんよね?
20.支えとして
船がヴェレスタ侯爵家の領地から出たものであるため、それが沈没したとなると、色々と対処しなければならないことがあった。
私とアドールは、日中それらの対処にあたった。その内容については一旦考えず、淡々とことを進めたのだ。
その判断は、間違っていなかったといえるだろう。内容について考えていたら、何もできなくなっていたかもしれない。
「ふう……とりあえず今日も一日お疲れ様」
「ええ、お疲れ様です」
そんな一日が終わってから、私はアドールを自室に招いていた。
理由はもちろん、例の件について語るためである。
ただ、すぐに切り出すことはできなかった。難しい問題であるため、躊躇ってしまっているのだ。
「その、フェレティナ様、一つご質問してもよろしいでしょうか?」
「……ええ、何かしら?」
「今日僕を呼び出したのは、船の件があったからですか?」
「……まあ、わかるわよね。ごめんなさいね」
私が躊躇っている内に、アドールの方から話を切り出してきた。
これに関しては、私が愚かだったといえるだろう。呼び出した時点で察するのが当たり前なのだから、さっさと本題を切り出すべきだったのだ。
「謝られるようなことではありません。僕も、そのことについて話したいと思っていましたから。ただですね、フェレティナ様が心配している程、落ち込んでいる訳ではないのですよ」
「……そうなの?」
「ええ、船の事故については悲しい出来事だとは思っています。たくさんの犠牲者が出たということには、心が痛みます。しかしこと父上に関しては、そうではありません。こういう考え方は好きではありませんが、報いを受けたということなのでしょう」
アドールは、遠くを見つめているようだった。
それは、事故で亡くなった人達のことを偲んでいるからなのだろう。
ただ、その対象にアドラス様は入っていないようである。私が思っているよりも、父親への割り切りができているということだろうか。
「本当に、もういいと思っているんです。父上のことで心は動きません。だって僕の傍には、フェレティナ様がいてくれるから」
「アドール……」
そこでアドールは、私に寄りかかってきた。
その小さな体から感じられる温もりに、私は思わず笑みを浮かべてしまう。彼が私のことを支えとしてくれていることが、なんだかとても嬉しかった。
アドラス様とヘレーナのことについて、私も考えることはやめるとしよう。二人はもういないのだ。身勝手な真似をした報いを受けて、海に消えていったのである。
私とアドールは、日中それらの対処にあたった。その内容については一旦考えず、淡々とことを進めたのだ。
その判断は、間違っていなかったといえるだろう。内容について考えていたら、何もできなくなっていたかもしれない。
「ふう……とりあえず今日も一日お疲れ様」
「ええ、お疲れ様です」
そんな一日が終わってから、私はアドールを自室に招いていた。
理由はもちろん、例の件について語るためである。
ただ、すぐに切り出すことはできなかった。難しい問題であるため、躊躇ってしまっているのだ。
「その、フェレティナ様、一つご質問してもよろしいでしょうか?」
「……ええ、何かしら?」
「今日僕を呼び出したのは、船の件があったからですか?」
「……まあ、わかるわよね。ごめんなさいね」
私が躊躇っている内に、アドールの方から話を切り出してきた。
これに関しては、私が愚かだったといえるだろう。呼び出した時点で察するのが当たり前なのだから、さっさと本題を切り出すべきだったのだ。
「謝られるようなことではありません。僕も、そのことについて話したいと思っていましたから。ただですね、フェレティナ様が心配している程、落ち込んでいる訳ではないのですよ」
「……そうなの?」
「ええ、船の事故については悲しい出来事だとは思っています。たくさんの犠牲者が出たということには、心が痛みます。しかしこと父上に関しては、そうではありません。こういう考え方は好きではありませんが、報いを受けたということなのでしょう」
アドールは、遠くを見つめているようだった。
それは、事故で亡くなった人達のことを偲んでいるからなのだろう。
ただ、その対象にアドラス様は入っていないようである。私が思っているよりも、父親への割り切りができているということだろうか。
「本当に、もういいと思っているんです。父上のことで心は動きません。だって僕の傍には、フェレティナ様がいてくれるから」
「アドール……」
そこでアドールは、私に寄りかかってきた。
その小さな体から感じられる温もりに、私は思わず笑みを浮かべてしまう。彼が私のことを支えとしてくれていることが、なんだかとても嬉しかった。
アドラス様とヘレーナのことについて、私も考えることはやめるとしよう。二人はもういないのだ。身勝手な真似をした報いを受けて、海に消えていったのである。