妹と駆け落ちしたあなたが他国で事業に失敗したからといって、私が援助する訳ありませんよね?
3.妹との関係は
アドラス様が出て行ってから、一夜が明けた。
当然のことながら、特に問題は起こっていない。
まあ問題なんてものは、そんなに起こるものでもないだろう。アドラス様もすぐに戻って来て、いつも通りの生活に戻るはずだ。
「……そういえば、フェレティナ様には兄弟がいらっしゃいますよね?」
「ええ、アドールも会ったことはあるわよね?」
「はい。ご挨拶させていただきました」
朝食の時間、アドールは私に質問をしてきた。
私には、兄と妹がいる。結婚しているのだから当然のことではあるが、アドラス様もアドールもその二人とは面識がある。
ただ、その二人についてアドールから聞かれるのは初めてのことだ。一体、どうしたというのだろうか。私は少し身構える。
「兄弟というものはどういうものなのか。参考までに少し聞いておきたくなって」
「あら、そうなの?」
「ええ、僕も弟や妹ができるかもしれませんからね」
「……まだ昨日のことを気にしているのかしら」
アドールの言葉で、彼が何故そのような話を振ってきたのかが、ある程度わかった。
私とアドラス様の間に子供ができた場合のことを、彼はきっとずっと考えていたのだろう。
そのようなことは、本当に気にする必要がないことだ。多分、子供ができるとしてもまだ先の話だろうし。
「いえ、そういう訳ではないのです。その、こういうことを言うのは少し恥ずかしいような気もするのですが……僕にも兄弟というものには憧れがあるのです」
「憧れ?」
「兄と姉は最早できる余地などはありませんが、弟や妹ができるなら歓迎……と言いますか、嬉しいと思うのです」
「なるほど……」
少し頬を赤らめながら話すアドールに、私は少し驚くことになった。
初めて彼から子供らしいことを言われたような気がする。アドールには少し失礼かもしれないが、可愛らしい考えだと思ってしまう。
ただそういうことなら、私としても話をすることに異論はない。とはいえ、実の所あまり明るい話ができるという訳でもないのだが。
「あのね、私は兄弟と……正確に言えば妹と、ね。お兄様との関係は良好だと思っているけれど、妹のヘレーナとはあまり仲が良いという訳でもないの」
「……そうなのですか? そんな風には見えませんでしたが」
「もちろん人前では普通に振る舞っているけれど、内情はそうでもないの」
私はアドールに対して、妹との仲を赤裸々に伝えた。
誤魔化しても良いかとも思ったのだが、彼は賢い子だ。本当のことを話した方が良いと、そう思ったのだ。
「ごめんなさいね、あまり明るい話ではなくて」
「いえ……」
「まあだから、私としてはアドールにそうなって欲しくないから、反面教師として見てもらいたいわね。そのためにどうすればいいのかは……これから考えるとしましょう」
「ええ、そうですね」
私の言葉に、アドールはゆっくりと頷いてくれた。
聡い彼のことだ。今の話で別に弟や妹が欲しくないなどとは、思わないだろう。私のことは私のこととして受け止めて、自分はそうならないようにと心掛けるはずだ。
当然のことながら、特に問題は起こっていない。
まあ問題なんてものは、そんなに起こるものでもないだろう。アドラス様もすぐに戻って来て、いつも通りの生活に戻るはずだ。
「……そういえば、フェレティナ様には兄弟がいらっしゃいますよね?」
「ええ、アドールも会ったことはあるわよね?」
「はい。ご挨拶させていただきました」
朝食の時間、アドールは私に質問をしてきた。
私には、兄と妹がいる。結婚しているのだから当然のことではあるが、アドラス様もアドールもその二人とは面識がある。
ただ、その二人についてアドールから聞かれるのは初めてのことだ。一体、どうしたというのだろうか。私は少し身構える。
「兄弟というものはどういうものなのか。参考までに少し聞いておきたくなって」
「あら、そうなの?」
「ええ、僕も弟や妹ができるかもしれませんからね」
「……まだ昨日のことを気にしているのかしら」
アドールの言葉で、彼が何故そのような話を振ってきたのかが、ある程度わかった。
私とアドラス様の間に子供ができた場合のことを、彼はきっとずっと考えていたのだろう。
そのようなことは、本当に気にする必要がないことだ。多分、子供ができるとしてもまだ先の話だろうし。
「いえ、そういう訳ではないのです。その、こういうことを言うのは少し恥ずかしいような気もするのですが……僕にも兄弟というものには憧れがあるのです」
「憧れ?」
「兄と姉は最早できる余地などはありませんが、弟や妹ができるなら歓迎……と言いますか、嬉しいと思うのです」
「なるほど……」
少し頬を赤らめながら話すアドールに、私は少し驚くことになった。
初めて彼から子供らしいことを言われたような気がする。アドールには少し失礼かもしれないが、可愛らしい考えだと思ってしまう。
ただそういうことなら、私としても話をすることに異論はない。とはいえ、実の所あまり明るい話ができるという訳でもないのだが。
「あのね、私は兄弟と……正確に言えば妹と、ね。お兄様との関係は良好だと思っているけれど、妹のヘレーナとはあまり仲が良いという訳でもないの」
「……そうなのですか? そんな風には見えませんでしたが」
「もちろん人前では普通に振る舞っているけれど、内情はそうでもないの」
私はアドールに対して、妹との仲を赤裸々に伝えた。
誤魔化しても良いかとも思ったのだが、彼は賢い子だ。本当のことを話した方が良いと、そう思ったのだ。
「ごめんなさいね、あまり明るい話ではなくて」
「いえ……」
「まあだから、私としてはアドールにそうなって欲しくないから、反面教師として見てもらいたいわね。そのためにどうすればいいのかは……これから考えるとしましょう」
「ええ、そうですね」
私の言葉に、アドールはゆっくりと頷いてくれた。
聡い彼のことだ。今の話で別に弟や妹が欲しくないなどとは、思わないだろう。私のことは私のこととして受け止めて、自分はそうならないようにと心掛けるはずだ。