妹と駆け落ちしたあなたが他国で事業に失敗したからといって、私が援助する訳ありませんよね?

44.酔っているかは

「あの……リヴェルト様は好きな食べ物などはありますか?」
「……はい?」

 リヴェルト様へのお礼を考えていた私は、わからなくなったため、相手に直接聞いてみることにした。
 実際の所、それが一番確実な手である。ここで好きなものを聞いておけば、それをプレゼントすることができるのだから、何も問題はないだろう。

「急にどうされたんですか?」
「いいじゃないですか、教えてくださいよ」
「フェレティナ様? もしかして、酔っていますか?」
「え? 酔ってなんか、いないと思いますけれど」

 私の言動に対して、リヴェルト様は違和感を覚えているようだった。
 しかし私は、酔ってなどいない。意識ははっきりとしているし、目もよく見える。決して酔ってなどはないはずである。
 というか、そんなことを言うリヴェルト様の方が酔っているのではないだろうか。実際の所、どうなのかは少し気になる所だ。お酒には強いのだろうか。

「いいえ、絶対に酔っています。いつものフェレティナ様らしくありませんよ」
「いつもの私って、どんな感じなんですか?」
「どんな感じ……まあ、冷静といいますか。もう少し論理的な会話をしてくださると思います」
「今の私は、論理的ではありませんか?」
「ありませんね」

 リヴェルト様は、なんだか妙に辛辣であった。
 いつもの彼ならもう少し優しいため、やはり酔っているのかもしれない。

「フェレティナ様、お部屋に戻ることをお勧めしますよ。私もそろそろ眠たくなってきましたし、お月見は終わりにしましょう」
「お月見? ああ、そういえば、そんな場でしたね……」
「忘れていましたか?」
「いえ、そんなことはありませんが……」

 これがそもそもお月見のためだったことは、もちろん把握している。
 ただよく考えてみれば、私はそこまでお月様を見られていない。これで終わりだというなら、きちんと目に焼き付けておくべきだろう。
 改めて見てみると、綺麗な月だ。アドールにも見せてあげたいが、彼は今夢の中にいるだろうし、起こすのは可哀想である。

「私が付き添いますから、部屋に戻りましょう」
「付き添いなんて、そんな……」
「さあ、こちらに来てください」

 リヴェルト様は、私の手を少し強引に引いてきた。
 そんなことはしなくても、部屋には戻れる。そう思った私は、思っていたよりも足取りがおぼつかなくて驚いてしまう。
 もしかして、私は酔っているのだろうか。そういえば、お酒を飲むのは久し振りだ。そもそも自分がお酒に強いかどうかも、よくわかっていないような気もする。
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