妹と駆け落ちしたあなたが他国で事業に失敗したからといって、私が援助する訳ありませんよね?
50.家族として
「フェレティナ様、私の率直な気持ちを聞いてもらっても構いませんか?」
「ええ、それはもちろん構いませんけれど」
リヴェルト様の言葉に、私は思わず目をそらしてしまった。
そういった話をするというのは、中々にむず痒いものである。
とはいえ、これは現ヴェレスタ侯爵アドールが持ち掛けたものだ。彼の母親としても、目をそらしてはならない問題である。
「私はフェレティナ様のことを尊敬できる女性であると思っています」
「そ、そうですか?」
「ええ、あなたは心優しい女性です。ヴェレスタ侯爵――いえ、アドールのためにこの家に留まるということは、中々できることではないと思います。あなたは心から彼のことを考えています。私はそんなあなたに、少なからず惹かれています」
「それって……」
真っ直ぐと私を見つめるリヴェルト様からの驚くべき言葉に、私は固まっていた。
少なからず惹かれている。まさかそんなことを言われるなんて、思ってもいなかったことだ。
ただ、それは冗談の類ではないだろう。それはその瞳が、物語っている。
「私はこの提案を受け入れたいと思っています。もちろん、父上などに相談する必要はありますが……」
「私なんかで、本当に良いのですか? 色々と問題があると思うのですけれど……」
「そういったものは些細なことです。そもそも、私は家を継ぐ立場ではありませんからね。多少の融通は利きます。それにヴェレスタ侯爵家との婚約は、ロナーダ子爵家にとってはメリットです。現ヴェレスタ侯爵は、母親思いの方ですからね」
リヴェルト様は、心情的にだけではなく利益的にも得であると判断しているらしい。
確かに、子爵家が侯爵家と身内になるというのは破格といえる婚約だ。もちろん、私の立場的には微妙な所であるのだが、少なくともアドールはその婚約を無下にすることはない。
そういうことならば、私としても断る理由はないといえる。私もリヴェルト様には、好感を抱いていたからだ。
「……わかりました。そういうことなら、よろしくお願いします」
「ありがとうございます、フェレティナ様」
「いえ、お礼を言われるようなことではありませんよ」
私は、リヴェルト様の手をゆっくりと取った。
彼となら、今度こそ良き夫婦になることができそうだ。その手から伝わってくる温もりに、私はそんなことを思っていた。
「ふふ、なんだか僕も嬉しいです。これからよろしくお願いしますね、リヴェルト様――いいえ、義夫上と呼んだ方が良いでしょうか?」
「え?」
「ああ、確かにそういうことになりますね。リヴェルト様、アドールとの関係は変わることになりますね?」
「なるほど、そういうことになりますか……」
リヴェルト様は、私達の言葉に目を丸めていた。
これでアドールが望んでいたことも叶うのだ。それは私にとって、嬉しいことである。
これから私達は、家族として過ごしていくことになるだろう。その未来はきっと明るいものであるはずだ。そう思って、私は笑みを浮かべるのだった。
「ええ、それはもちろん構いませんけれど」
リヴェルト様の言葉に、私は思わず目をそらしてしまった。
そういった話をするというのは、中々にむず痒いものである。
とはいえ、これは現ヴェレスタ侯爵アドールが持ち掛けたものだ。彼の母親としても、目をそらしてはならない問題である。
「私はフェレティナ様のことを尊敬できる女性であると思っています」
「そ、そうですか?」
「ええ、あなたは心優しい女性です。ヴェレスタ侯爵――いえ、アドールのためにこの家に留まるということは、中々できることではないと思います。あなたは心から彼のことを考えています。私はそんなあなたに、少なからず惹かれています」
「それって……」
真っ直ぐと私を見つめるリヴェルト様からの驚くべき言葉に、私は固まっていた。
少なからず惹かれている。まさかそんなことを言われるなんて、思ってもいなかったことだ。
ただ、それは冗談の類ではないだろう。それはその瞳が、物語っている。
「私はこの提案を受け入れたいと思っています。もちろん、父上などに相談する必要はありますが……」
「私なんかで、本当に良いのですか? 色々と問題があると思うのですけれど……」
「そういったものは些細なことです。そもそも、私は家を継ぐ立場ではありませんからね。多少の融通は利きます。それにヴェレスタ侯爵家との婚約は、ロナーダ子爵家にとってはメリットです。現ヴェレスタ侯爵は、母親思いの方ですからね」
リヴェルト様は、心情的にだけではなく利益的にも得であると判断しているらしい。
確かに、子爵家が侯爵家と身内になるというのは破格といえる婚約だ。もちろん、私の立場的には微妙な所であるのだが、少なくともアドールはその婚約を無下にすることはない。
そういうことならば、私としても断る理由はないといえる。私もリヴェルト様には、好感を抱いていたからだ。
「……わかりました。そういうことなら、よろしくお願いします」
「ありがとうございます、フェレティナ様」
「いえ、お礼を言われるようなことではありませんよ」
私は、リヴェルト様の手をゆっくりと取った。
彼となら、今度こそ良き夫婦になることができそうだ。その手から伝わってくる温もりに、私はそんなことを思っていた。
「ふふ、なんだか僕も嬉しいです。これからよろしくお願いしますね、リヴェルト様――いいえ、義夫上と呼んだ方が良いでしょうか?」
「え?」
「ああ、確かにそういうことになりますね。リヴェルト様、アドールとの関係は変わることになりますね?」
「なるほど、そういうことになりますか……」
リヴェルト様は、私達の言葉に目を丸めていた。
これでアドールが望んでいたことも叶うのだ。それは私にとって、嬉しいことである。
これから私達は、家族として過ごしていくことになるだろう。その未来はきっと明るいものであるはずだ。そう思って、私は笑みを浮かべるのだった。