妹と駆け落ちしたあなたが他国で事業に失敗したからといって、私が援助する訳ありませんよね?
61.排除すべき者
私とアドールは、ボガートのことを色々な人に伝えた。
その中で最も早く反応を返したのは、ストーレン伯爵だ。彼は、非常に端的な回答を返してきた。
「アドラス様を謀殺する、ですか……」
「伯父様は過激ですね……」
ストーレン伯爵は、アドラス様に憎しみを向けている。
その憎しみは、はっきりと言って以上だ。それは恐らく、アドールの実の母親が関わっているのだろう。
ストーレン伯爵は、妹のことをかなり可愛がっていたらしい。そんな妹との忘れ形見を捨て去ったアドラス様は、最も許せない存在であるようだ。
「こちらは、お兄様からの手紙ね……」
「ハルベルク様から、ですか?」
「ええ、エメラナ姫からの手紙もあるみたい」
私は、今日届いた手紙を確認していた。
その中にあったお兄様の手紙を手に取り、エメラナ姫からのものをアドールに渡す。
後もう一人、ロナーダ子爵にもこのことは知らせてあるのだが、彼からの返答はまだのようだ。
人格者であり、窮地の中でもあるロナーダ子爵は、アドラス様への処置に対して色々と考えているのかもしれない。
そんなことを考えながら、私はお兄様の手紙に目を通していく。
「お兄様も、アドラス様のことは始末した方が良いと考えているみたいね。彼が生きていて、いいことが一つもないと考えているみたい。もちろん、ストーレン伯爵のように既に行動を開始してはいないけれど」
「エメラナ姫の方は、特に答えなどは出ていないようです。生きていて良かったのか悪かったのわからないと、赤裸々に書いてくれています」
お兄様はもちろん、エメラナ姫やロナーダ子爵の頭にも謀殺の考えは過っただろう。
はっきりと言って、アドラス様に今更出て来られても困る。彼の存在は、邪魔者でしかない。
ただ、謀殺というのはあまりにも気が進まないものだ。暗殺者などといったものには、できれば頼りたくないというのが私の本音である。
「正直に言いますが、僕は伯父様やハルベルク様の案に賛成です。父上はヴェレスタ侯爵家にとって邪魔者、万が一生きていることを表明されたりしたら困ります。ヴェレスタ侯爵家に大打撃を与えかねない」
「それは……」
「……もちろん、気は進みません。それは父上だからという訳ではなく、暗殺だとかそういう手は取りたくないということです。だから、難しい問題だと思ってしまいます」
アドールは、私に対して弱々しい表情で言葉をかけてきた。
彼は、かなり迷っているようだ。それは当然である。こんなことは、簡単に決められることではない。
「……二人とも」
「リヴェルト様?」
そんなことを考えていると、部屋にリヴェルト様が入って来た。
彼は、とても焦ったような顔をしている。その理由は、すぐに理解することができた。その背後に、ストーレン伯爵がいたからだ。
その中で最も早く反応を返したのは、ストーレン伯爵だ。彼は、非常に端的な回答を返してきた。
「アドラス様を謀殺する、ですか……」
「伯父様は過激ですね……」
ストーレン伯爵は、アドラス様に憎しみを向けている。
その憎しみは、はっきりと言って以上だ。それは恐らく、アドールの実の母親が関わっているのだろう。
ストーレン伯爵は、妹のことをかなり可愛がっていたらしい。そんな妹との忘れ形見を捨て去ったアドラス様は、最も許せない存在であるようだ。
「こちらは、お兄様からの手紙ね……」
「ハルベルク様から、ですか?」
「ええ、エメラナ姫からの手紙もあるみたい」
私は、今日届いた手紙を確認していた。
その中にあったお兄様の手紙を手に取り、エメラナ姫からのものをアドールに渡す。
後もう一人、ロナーダ子爵にもこのことは知らせてあるのだが、彼からの返答はまだのようだ。
人格者であり、窮地の中でもあるロナーダ子爵は、アドラス様への処置に対して色々と考えているのかもしれない。
そんなことを考えながら、私はお兄様の手紙に目を通していく。
「お兄様も、アドラス様のことは始末した方が良いと考えているみたいね。彼が生きていて、いいことが一つもないと考えているみたい。もちろん、ストーレン伯爵のように既に行動を開始してはいないけれど」
「エメラナ姫の方は、特に答えなどは出ていないようです。生きていて良かったのか悪かったのわからないと、赤裸々に書いてくれています」
お兄様はもちろん、エメラナ姫やロナーダ子爵の頭にも謀殺の考えは過っただろう。
はっきりと言って、アドラス様に今更出て来られても困る。彼の存在は、邪魔者でしかない。
ただ、謀殺というのはあまりにも気が進まないものだ。暗殺者などといったものには、できれば頼りたくないというのが私の本音である。
「正直に言いますが、僕は伯父様やハルベルク様の案に賛成です。父上はヴェレスタ侯爵家にとって邪魔者、万が一生きていることを表明されたりしたら困ります。ヴェレスタ侯爵家に大打撃を与えかねない」
「それは……」
「……もちろん、気は進みません。それは父上だからという訳ではなく、暗殺だとかそういう手は取りたくないということです。だから、難しい問題だと思ってしまいます」
アドールは、私に対して弱々しい表情で言葉をかけてきた。
彼は、かなり迷っているようだ。それは当然である。こんなことは、簡単に決められることではない。
「……二人とも」
「リヴェルト様?」
そんなことを考えていると、部屋にリヴェルト様が入って来た。
彼は、とても焦ったような顔をしている。その理由は、すぐに理解することができた。その背後に、ストーレン伯爵がいたからだ。