恋をしたのは姉の夫だった人
 すると、次の瞬間に突然朝陽に手を取られた。
冷たい空気に晒されていた手が一瞬で熱を持つ。

「な、何……?」

 動揺して声が震える。
すると、彼が一歩前進してさらに距離を近くした。

「俺はずっと後悔してたんだ」

 突然の待ち伏せられ手を握られるなんて、考えられることは一つしかない。
聞きたくなく、目を伏せる。

「ずっと、優を忘れられなかった」

 予感は的中し、戸惑う気持ちが胸いっぱいに広がる。

「俺たち、やり直せないか?」

「な、何言って……」

「好きなんだ、優のことが今でも。もう一度やり直したい」

 朝陽以外がかすんだかのように、視界には彼だけがいっぱいに映る。
彼は凛々しく眉を上げ、真剣な表情で優を見つめた。
優は目を瞬き息を小さく吸うものの、意味はなく少しも心は落ち着かない。

「ずいぶん勝手な話だと思ってる。けど、本当に優のことが忘れられなくて……考えてほしいんだ」

 どうして今なのだろうか。

「考えてって言われても困るよ」

 正直に心の内を打ち明けるが、朝陽は真剣な表情を崩さない。

「本当に好きなんだ。今度は絶対に間違えない。大切にするから」

 もっと昔であれば、迷わず朝陽の手を握り返して笑えたはず。
しかし今は、別に好きな人がいる。
それは許されない相手だけれど――。
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