恋をしたのは姉の夫だった人
 今夜も心を睡魔から守り、宿題を無事に終わらせたことにホッとしていた。
落ち着いたのは瑞樹も同じ。
向かいのダイニングチェアに座り、ブラックのコーヒーの入ったシンプルな真っ白のカップに口を付ける。

「優ちゃんが来てくれて、心を見てくれるから本当に助かってるよ」

「そう言ってもらえると嬉しいです」

 それについては心からそう思うので、喜びを頬に浮かべた。

「毎日大変じゃない?」

 瑞樹が心配そうな目つきで優を窺う。

「そんな、全然ですよ!」

 首を横に振ってそう言うが、「本当に?」と上目遣いに見つめられる。

「本当に大変だなんてこれっぽちも思ってないです。逆に私がいて迷惑とかでなければ毎日お邪魔したいです」

「優ちゃんを迷惑だなんて思うはずがないよ」

 やけに真剣な表情で言われ少しだけたじろぐが、素直に嬉しかったので笑みを作った。

「よかったです。心は本当に私の癒しなので」

 あなたに会うことにも癒されています……とは言えず、ココアを口にした。
彼の作る甘いココアは、いつ飲んでも美味しい。

「お義兄さんこそ毎日大丈夫ですか?今の時期は風邪が流行るので大変ですよね」

 今度は優が心配する番で、眉を下げて彼を見つめる。

「俺は大丈夫だよ、体だけは丈夫だからね」

「そうだとしても、無理だけはされないでくださいね」

「ありがとう、優ちゃんもね」

 優の今日一日の疲れが、瑞樹の優しさに撫でらゆっくりと溶けてゆくよう。
ココアを飲み終えるまで、この幸せな時間に浸った。
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