恋をしたのは姉の夫だった人
 ミタチに着き、急ぎ足で受付へ行く優。
ここまでは朝陽に会わずホッとしていたが、受付の顔ぶれを見て胸にキュッと絞ったような悲しみが沸いた。
三ヶ月ほど前に訪れた時から、受付嬢が二人年若そうな可愛らしい女性に変わっていたからだ。
優にとってそれは他人事ではない。

 受付嬢は派遣社員か契約社員での採用がほとんど。
それは大手になればなるほどで、ミタチもどちらかだと思う。
ちなみに優は後者で、更新を繰り返し今になる。
そろそろ若い誰かに変わってもらいたいと思われている頃なはず。
人事課の社員に挨拶をする度に、毎回見定められているようでドキドキしている優。
それに比べ、まだ彼女たちはそんな悩みはないに違いない。
心苦しさを隠し笑顔を貼り付け、受付嬢に封筒を手渡しミタチを出た。

 外はまだ雨がひどい。
さらに憂鬱になり、自然にため息が出た。
傘を開き足を一歩踏み出した時、後ろから「優」と声を掛けられた。

「朝陽……」

 会いたくないと思っていたのに、どうして会ってしまうのだろう。

「今日はどうしてここに?」

「受付に書類を届けに来たの」

「そんなこともするんだ、まさかこれまでもここに来たことがあるのか?」

「うん、何度かね」

 すると彼は、あぁまじかと残念そうに嘆く。
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