恋をしたのは姉の夫だった人
変わりゆく関係に
 タイミングよく店員がハンバーグ定食を運んできたので、会話が止まった。
店員がそれぞれの前にトレイを置きいなくなると、朝陽は体を前のめりにして「なぁ、好きな人って誰?」と尋ねる。

「そんなの教えられないよ」

「教えられないのはいないからだろ」

 優は首を横に振りいるよと口にするが、彼は嘘だねと、信じてくれない。

「優はUPHに入ってからずっと彼氏はいないだろ?」

「な、なんで知ってるの……!?」

 まるで優のことを知っているかのような口ぶりに、ハッと顔を上げる。

「UPHの総務に大学の時の友人がいるんだ」

「……え」

「そいつから、優のことをちょこちょこ聞いてた」

 朝陽はほんの少しバツの悪い顔をして打ち明けた。

「え、聞いてたって、何それ嫌なんだけど……」

 自分の知らないところで話題にされていることを思うと、不快感を抱かずにいられない。
高く評価されているとは思えないので、顔が歪む。
仕事のことになると、途端に自信をなくしてしまう。
若い頃はそんなことはなかったというのに。

「優のことはいい話ししか聞かないけど」

「えぇ、嘘っぽいし……」

「嘘じゃないって。優の対応は受付で一番丁寧で、可愛いし癒し系で人気があるって聞いてるぞ。だから男にモテてることもよく聞くな」

 噓ばっかりとため息を吐く。

「だから噓じゃないよ」

 優ははいはいと言って、温かいお茶の入った湯呑に口付けた。
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