恋をしたのは姉の夫だった人
 優は乾いてしまうくらい目を何度も瞬く。

「……本当はもっとスマートに言いたかったけど、もう構っていられないから言うね。俺は優ちゃんが好きなんだ」

「え……」

 嘘……そんなはずはない。
大好きな瑞樹からの告白なのに、戸惑いと疑いが大きく嬉しさを感じる余裕はない。
少しの間、空気がしんと乾く。
瑞樹の目が頼りなさげに揺れるが、真っ直ぐに優を見つめるのは変わらない。

「まだ若い優ちゃんに、やもめでコブ付きの俺が好意を持つのもおこがましいとは思うんだけど……」

 瑞樹が蔑んだ言い方をするので、我慢ならず「お義兄さんは、素敵な方ですよ!」と遮ってしまう。
彼はちょっぴり驚いた顔をするが、本当のことなので堂々と続けた。

「だからそんな言い方はダメです。それに若いなんて、私はもう20代後半ですので」

「あ、ありがとう」

 優はようやくハッとして、いえと首を横に小さく振った。

「えっと、私を好きなんて冗談……ですよね?」

 心臓がバクバクうるさく音を立てている。

「冗談じゃないよ。優ちゃんが好きなんだ。心にも俺の気持ちはすっかりバレていて……実は応援してくれてる」

「え!心が……!?」

 そんな空気は全く感じなかった。
最大に驚くが、彼はうんと大きく首を振り肯定するので真実なのだと理解する。

「優ちゃんにとっての俺は心の父親にしか思えないはずだけど、考えてみてくれないかな……?」

「……え」

「結婚を前提に付き合ってほしいんだ」

 まさに青天の霹靂。
優は思いがけない告白にしばらく放心状態で瑞樹を見つめた。
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