恋をしたのは姉の夫だった人

募る想いは

 約束の日がやってくるのはあっという間だった。
土曜日の十時、部屋のチャイムがピンポンと鳴り、優は慌てて扉を開けた。
そこには瑞樹の姿があり、胸の鼓動が一気に速まる。

「優ちゃん、おはよう」

「おはようございます」

 実のところ、瑞樹が優の部屋を訪れるのは初めて。
普段と違うことに胸はドキドキとうるさい。

「大丈夫?準備はできてる?」

「大丈夫です」

 今朝は休日だというのに、平日と変わらない時間に目覚めたほど、興奮していた。

「なんか、ドキドキしてしまうな」

「え?」

「今日の優ちゃん、すごく可愛いから」

 初めて瑞樹と二人きりで出かけるので、服装についてかなり悩んだ。
好きな男性(ひと)に見せたいために可愛く仕上げたい自分と、はりきっていると思われないように抑えようとする自分がいて、塩梅が難しかったのだ。
悩んだ結果、柔らかい白のファーセーターに、黒のミディアム丈のスカートを着て、お気に入りの淡いピンクの襟にファー付きのコートを手にかけていた。
靴はブーツを選び、めちゃくちゃデート仕様である。
乙女心には勝てず、前者が勝ってしまったというわけだ。

「そんなことないです……」

 そう言いつつも照れて喜んでしまうと、瑞樹がそんなことあるよと言うので、はにかんだ笑みを返した。


 普段は心を挟んで三人で歩くことが多いけれど、今日は二人並んで歩く。
なんだか変な感じだが、優は浮かれていた。

 向かう先はフクロウカフェ。
食事の前にせっかくだからどこかへ行こうと誘われ、どこに行きたいかと尋ねられたため、優が選んだ場所だった。

「お義兄さんはフクロウカフェでよかったんですか?」

「うん。動物はなんでも好きだよ」

「私もです」

 フフッと笑いながら「心には今日のこと話しました?」と尋ねた。

「秘密にしてきたよ」

「話せば絶対に行きたがりますもんね、下見というわけですね?」

 すると瑞樹は「うん。デートを兼ねたね」と、笑う。
いけない、胸がときめいてしかたがない。
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