恋をしたのは姉の夫だった人
 仕方がないと諦めて、二人は店を出た。
申し訳なさすぎて謝るも、彼はとんでもない!と首を横に振る。

「優ちゃん、こういうことは男の俺が調べておくものなのにごめんね」

「そんなことないです!私がしっかりしていなかったので!」

「いやいや、優ちゃんは何も悪くないよ」

「お義兄さんだって悪くないです……」

 このままだと二人は永遠に同じことを繰り返してしまうだろう。
そこで瑞樹が、「じゃあ、今回はおあいこで、またリベンジしよう」と言った。

「リベンジ……?」

 その意味はもちろんわかるが、繰り返してしまう。

「うん、また今度予約してこよう」

 それは二人きりで……?
そう心の中で思ったけれど、口に出すのは止めて頷いた。
きっと瑞樹はそうだと言うに違いない。
そうなったときに困るのは優である。

 瑞樹は優が拒まないことが嬉しかったのか柔らかい笑みを浮かべた。
つられて微笑むと、頭をポンポンとされ、恥ずかしくて目を伏せる。
頭上が途端に熱を持つ。

「よし、じゃあこれからの作戦を練ろうか?」

 優は、はいと頷いて、はにかんだ。
失敗しても責めないどころか優しい瑞樹。
その上、引っ張っていってくれるところに、ますます好感を持つ。

 瑞樹の優しい表情も性格も全部好き。
この想いを伝えられたらどんなにいいだろう。
優は息を小さく吐いて、眩しく映る彼を見つめた。
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