恋をしたのは姉の夫だった人
 二人はどこへ行こうかと話し合った結果、行き先を水族館へと決めた。
デートといえば定番の水族館。
それだけで胸が高鳴る自分がいて、姉に心で謝る優。

 水族館には多くのカップルがいるはず。
雰囲気に飲まれないように気を付けなければならない。

 改めて電車移動をして、二人は水族館へたどり着いた。
空いていてよかったねと冗談を言う瑞樹に笑う。

 この水族館は、水槽に光を照らすという最先端のデジタルアートを取り入れている。
入った瞬間から足元から天井まで照明が煌めいていて、とてもロマンチックな雰囲気。

「なんだか夜みたいですね」

「そうだね」

 瑞樹をふと見上げると、暗がりの中でも優しくくっきりと浮かぶ。

「心も連れてきたら喜ぶでしょうね」

「本当だね。きっと飛んで喜ぶね」

「今頃何してるでしょうか。動物園にそろそろ着いた頃かなぁ……」

 両親と動物園に行くとはしゃいでいた心。
優は時間を確かめようと、手首に着けた腕時計を確認する。
すると、その手を掴まれてしまった。

「お、お義兄さん……?」

 途端に体が熱を持つ。
一体なぜ……?
心臓が激しくドクドクと音を立ててうるさい。
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