恋をしたのは姉の夫だった人
 にやけそうになる顔をグッと堪えると、彼はごめんと言う。

「ぬいぐるみって子供じみてるかな?女性に贈り物なんて、もう長らく縁がないから……」

 瑞樹は残念そうに顔を歪めるけれど、その表情に胸はキュンとする。
変にカッコつけたり、女性に慣れている様子を出さないところに好感を覚えた。
何よりも女性に縁がないということに、嬉しいと感じてしまうのだけれど。

「そんなことないです。すごく可愛い」

「本当?じゃあこれにするね」

「あの、それならお義兄さんにも何か買わせてください」

 自分ばかりでは申し訳ないのでそう言うと、彼は「うーん、それならお揃いでキーホルダーかなにか買わない?」と提案してくる。
お揃いなんて特別な関係のみでつけ合うもの。
とても嬉しい提案だが、素直に受け入れていいものなのか悩む。

「あぁ、もしかしてまたやってしまったかな?キーホルダーなんて古いかな」

 瑞樹は自虐的に言うので、反射的に否定してしまった。

「そんなことないですよ!鍵に付けていたキーホルダーが壊れかけていたので、新しいのを買いたいと思っていたんです」

 その途端、瑞樹の顔がぱあっと明るくなった。
いけない。
胸がトクトクと震え、また彼に惹き付けられてしまう。

「よかった。探してみようか」

「……はい」

 まるで本物のカップルのよう。
でも、今だけは堪能したい。
また夜に姉の夢を見るだろうか。

 許して、お姉ちゃん……。

 ギュッと下唇を噛み締めるけれど、瑞樹に手を取られたことで体の力が抜けていく。
優の気持ちは喜びと申し訳なさとで忙しかった。
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