恋をしたのは姉の夫だった人
 それから、「お義兄さんって優は姉妹だったよな?優の姉ちゃんの旦那……?」

 朝陽とは、姉が亡くなる前に別れたので、その事実を知らない。

「うん……」

 首を縦に振り、下唇を軽く噛んだ。

「へぇ、仲いいんだな」

「……そうだよ、家族だから!」

 無理に笑みを浮かべると「そっか」と、微笑み返された。

 いけない、家族と口にして、落ち込んでいる自分がいる。
瑞樹は姉の夫だった人なのに、最低だ。
こんなに胸が痛くなるなんて……自分が嫌になる。

「ごめんね、お義兄さん待たせてるし、私、行くね」

「おぅ」

 優は二人に挨拶をして、瑞樹の下へ戻った。

「ごめんなさい、お待たせしました」

「あれ、メニューは?なかったの?」

「あ、はい……」

 姉に対する罪悪感で、メニューのことなどすっかり失念していた。

「……優ちゃん?」

 瑞樹は優の顔を覗き込む。
大好きな顔がすぐ近くにくるのに、なんだか泣きそうになる。

 どうして彼は、姉の夫だった人なのだろう。

「顔色が悪いよ」

「……え、そんなことはないですよ」

 首を左右に振って否定すると、瑞樹に手を掴まれた。
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