恋をしたのは姉の夫だった人
優しい目を向けられ、たまらず目を伏せる。
「大丈夫?」
「はい、すみません……」
「こっちこそごめん。さっきの店はまた今度行こうね」
――今度。
二人に今度はあるのだろうか。
何も言えず、視線を彷徨わせる。
気まずい空気が流れる中、瑞樹が「お腹空いたね、何頼もうか?」と優しく尋ねた。
瑞樹の手がこちらに伸びて、優の近くに立ててあるメニューを取った。
彼の優しい香りがふわりと漂い、反射的にすんと息を吸う。
店内にはしょうがやにんにくの香りが立ち込めているのに、瑞樹の香りをかぎわけられる優は、本当に彼が好きなのだ。
「何か食べたいものある?」
「いえ、お義兄さんのおすすめでお願いします」
「了解。じゃあいくつか頼んでシェアしようか?」
普段からそのスタイルなので、コクリと頷く。
彼が店員を呼び注文をする横顔を、優はこっそり見つめていた。
注文した品が次々と運ばれてくる。
しょうが焼きにコロッケ、餃子に酢豚と、多種類の料理が並ぶ。
「お義兄さん、これ、頼みすぎじゃないですか……?」
彼は、「優ちゃんに美味しいものを食べてもらいたいと思っていたら、頼みすぎちゃったよ」とハハッと笑う。
「もう、だからって頼み過ぎです」
そうは言うが、心の中では喜んでいる。
可能なら無理してでも全部食べてしまいたくなるような言葉。
「大丈夫、二人で頑張って食べよう」
瑞樹は割り箸を割って優に差し出した。
「はい、食べよう」
「ありがとうございます」
なかなか割り箸を割って渡してくれる人なんていない。
こういう小さな気遣いにも惹かれる。
二人きりで出掛けてみて、嫌なところが見つからない。
寧ろ、彼が好きだとますます自覚させられていくのだ。
「大丈夫?」
「はい、すみません……」
「こっちこそごめん。さっきの店はまた今度行こうね」
――今度。
二人に今度はあるのだろうか。
何も言えず、視線を彷徨わせる。
気まずい空気が流れる中、瑞樹が「お腹空いたね、何頼もうか?」と優しく尋ねた。
瑞樹の手がこちらに伸びて、優の近くに立ててあるメニューを取った。
彼の優しい香りがふわりと漂い、反射的にすんと息を吸う。
店内にはしょうがやにんにくの香りが立ち込めているのに、瑞樹の香りをかぎわけられる優は、本当に彼が好きなのだ。
「何か食べたいものある?」
「いえ、お義兄さんのおすすめでお願いします」
「了解。じゃあいくつか頼んでシェアしようか?」
普段からそのスタイルなので、コクリと頷く。
彼が店員を呼び注文をする横顔を、優はこっそり見つめていた。
注文した品が次々と運ばれてくる。
しょうが焼きにコロッケ、餃子に酢豚と、多種類の料理が並ぶ。
「お義兄さん、これ、頼みすぎじゃないですか……?」
彼は、「優ちゃんに美味しいものを食べてもらいたいと思っていたら、頼みすぎちゃったよ」とハハッと笑う。
「もう、だからって頼み過ぎです」
そうは言うが、心の中では喜んでいる。
可能なら無理してでも全部食べてしまいたくなるような言葉。
「大丈夫、二人で頑張って食べよう」
瑞樹は割り箸を割って優に差し出した。
「はい、食べよう」
「ありがとうございます」
なかなか割り箸を割って渡してくれる人なんていない。
こういう小さな気遣いにも惹かれる。
二人きりで出掛けてみて、嫌なところが見つからない。
寧ろ、彼が好きだとますます自覚させられていくのだ。