Last Flower
ところが、思ったよりも続いたその人との会話は
意外と面白かった。

仕事の話、出身の話、好きな季節の話。
自己紹介代わりに話したその会話は、なんだか
不思議に初めて話す人ではないみたいだった。

名前はらいかくん。
北海道出身であること、
好きな季節は秋だということ
野球をやってたこと、
私より二つ年上だということ
お酒が弱いこと。

たった半日のdmにしては、十分すぎるほどの
挨拶であり、自己紹介である。

途切れることを知らないそのdmは、
あの日から2日経ってもまだ続いていた。

『彼氏いる?』

何気なく来ていたdmに目が止まる。
(彼氏かぁ)
私にはその言葉が1番重かった。
彼氏がいなかったわけではない。
実際、夏まではいたのだから。
ただ一言言うと私は恋愛が下手である。


実際今も、好意を持ってくれたら人がいる。
その人が嫌いなわけではなかった。
むしろ誕生日をお互い祝ったりする程の仲。
けれど、どうにも付き合いたいと思えなかった。
いっそ仲がいいのならそれで良いではないか。
友達でいいではないかと思ってしまう。
その先の関係になることが怖かった。

『いないよー』

そう返すと、予想外の会話が幕を開ける。

『安心安心』
『なんの安心?』
『いたらこんなに話しかけるの気まずいやん』
『いないから大丈夫だよー』
『逆にいるのー?』
『いたら連絡先聞かん、欲しいけどね
 まぁ、可愛かったから聞いちゃったよね』
『可愛くないけど』
『いゃ、可愛いでしょ、らいかはタイプ』

(ド直球な人だな、)

初めてだった。
駆け引きをしない普通の会話が。
出会い方からしてそもそも話が続くと思っていなかった
こともあり、この人不思議とは思っていたものの
私の出会ったことのない人であることは確かだった。


何気ない会話が続いた4日目。
このあと私の運命を変えるであろう出来事が
起こることを私は知らなかった。

『お願い聞いて』
『どしたの?』
『デートしない?』
『?!?!』
『いゃ、したいなーと思って』
『あー、なるほど』
『どタイプすぎて誘ってしまったのよ』
『なるほど』
『うん』
『いいよ』
『いいの?!
 あ、喜んでしまった』
『いいよ笑』
『ダメ元で言ってよかった』

自分でもなぜ"いいよ"と返事をしたのかは
分からなかった。
ただらいかくんにもう1度会ってみたいと思った。
ただそれだけだった。
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