私のたけちゃん
 私が貧血で倒れたのは、それから間もなくのことだった。

 テスト期間中は部活の見学が禁止されていたので、久し振りに見学しに行こうと席を立った瞬間、視界が真っ白になった。

 テスト終了後、教室で意識を失いぶっ倒れた私は、転倒した際おでこを机に激しく打ちつけ流血‥‥せっかく目立たなくなっていた傷と同じ場所を縫う羽目になった。

 頭から血を流し意識を失っていたため救急車が呼ばれる大惨事となり、目が覚めた時に私がいたのは病院のベッドの上だった。

 私は倒れてから1日以上眠り続けていたらしく、医師による診断は『栄養失調と睡眠不足による衰弱』で、私が目を覚まして安心したお母さんにもの凄く怒られた。

 たけちゃんにあわせた早朝登校を禁止されたのは当然の結果だと思う。

 反発されると思って身構えていたらしいお母さんが拍子抜けする程、私はあっさりとそれを受け入れた。

 たけちゃんと一緒にいるのがつらくなっていたのは確かだ。でも何よりも心配したのは、私のせいでたけちゃんがまた責任を感じてしまうこと。

 子供の時のこともそうだが、今回だって私が勝手にたけちゃんにつきまとった結果起こったことなのだ。たけちゃんに非は一切ない。

 おでこに貼られたガーゼを鏡で見ながら、私はため息を吐いた。

「まるで呪いだな」

 この傷を目にしたら、たけちゃんはまた自分を責めてしまうのかもしれない。

 たけちゃんは優し過ぎるのだ。でもだからこそ大好きなのだからどうしようもない。

 スマホの電源を入れたらたけちゃんから何度も連絡が来ていた。

 私が倒れた日の部活後にいつもいるはずの私の居場所を確認する内容。帰宅後私の無事を確認する内容。その後私が学校で倒れ救急車で運ばれてそのまま入院したことを知り、心配していることを伝える内容。

 昨日も朝昼晩の3回。そして今朝。たけちゃんは既読がつかないことを心配して何度も繰り返しメッセージを送ってくれていた。

 たけちゃんは少し前から私の体調を気にかけてくれていた。それを無視して倒れたのは私なのにこんなにも心配をかけてしまって、申し訳なさ過ぎる。

 取り急ぎ目が覚めたことを伝えるメッセージを送る。続けて心配をかけたことに対する謝罪と、たけちゃんの忠告を無視した結果こうなって反省していることを伝えた。

 そして‥‥‥‥

『体調を考慮してしばらくは一緒に登下校するのは控えるね』

 一瞬迷った後、送信ボタンをタップした。
< 14 / 41 >

この作品をシェア

pagetop