私のたけちゃん
大学時代

イケメン

 たけちゃんが通う大学は国立の中でも難関と言われる大学のひとつだ。学部によっては国内最高峰と並ぶ学力を必要とする。悩みに悩んで私はその最高峰に挑むことにした。

 大学卒業後の進路を考えた時、おそらくたけちゃんはどこかスポンサーとなってくれる企業に就職することになるだろう。

 私がその企業に就職しても、たけちゃんとの接点はほぼないと予測される。

 だったら私はどうするべきか。

 せっかく一生懸命勉強してここまで学力を上げたのだ。医学部に入ってスポーツドクターを目指してみるのはどうだろう?

 これまで覗き見と応援しかしてこなかった私だが、もし医者になれたらたけちゃんが怪我をしても助けてあげられるのだ。

 まるで私のためにある職業ではないか!

 進路が決まり、私はそれまで以上に勉強に打ち込んだ。そして1年後、私は見事に合格を勝ち取ったのである。

 大学合格はゴールではなくスタートだ。でもたけちゃんにもうすぐ会えると思ったら、浮かれずにはいられない。

 全国大会が終わってしばらく経った頃、たけちゃんからメッセージが届いた。

 それは高橋に勝てなかったことを報告する内容で、最後に『絶対に諦めないから』と続いていた。

 『頑張って』と返信を送ってその時のやり取りは終わったが、その後もたまにメッセージが届くようになった。

 私から送り始めると際限がなくなるのが目に見えていたので、たけちゃんからのメッセージを楽しみに待つことにした。

 一方通行だと思っていた私とたけちゃんの関係がまだ細い糸で繋がっていたことを知り、私は迷いなくたけちゃんが通う大学を目指すために頑張れた。

 たけちゃんは私の合格を知って喜んでくれたし、『待ってる』とも言ってくれたのだ。

 こんなの、浮かれないなんて無茶である。

 大学のそばにある学生用のアパートを借りられることになり、引っ越しの荷物に合わせて私も移動し、荷解きはたけちゃんが手伝ってくれることになっていた。

 大学は北関東にあり、通えないけどまあまあ近い距離ではある。現地につくまではやることもなく、1年ぶりに会うたけちゃんを想像して幸せに浸っていた。

 駅まで迎えに来てくれると言っていたので改札を出てキョロキョロするが、まだそれらしい人はいないようだ。

「のぞみ?」

 すぐそばで声をかけられ振り向くと‥‥そこにいたのは‥‥イケメンだった。
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