柔道金メダリスト、婚活はじめました!〜最後に選ぶのは、幼馴染?元カレ?それとも婚活?

ep1

私は、長年の夢だった舞台に立っている。

「がんばれえええええ!」
「ゆい!!!」
「日本!!!勝てぇぇぇぇ。」
「池田選手!!!」

歓声が私の力になる。

4年に1度の舞台、オリンピック。

32歳という年で念願の初出場を果たし、ついに迎えた決勝の舞台。

「柔道女子48kg級の決勝が始まりました。日本の池田です。相手はフランスのジェシカ、世界選手権王者です。」

相手は、世界選手権王者ジェシカ。

私よりも大柄の選手だ。

「山田さん、いかがでしょうか?」

「そうですね。手を取られたくないですね。」

私は、一生懸命手を取られないように神経を張り巡らせた。

「そうですね。慎重に行きたいところですね。彼女は、今回がラストチャンスだ、だから必ず金メダルを獲りたい、そう語っていました。」

そう。私にとってこれが年齢的にもラストチャンス。

決めなくては。

「そうですね。彼女の地道な努力がこの舞台まで連れてきてくれたと思います。夢を叶えて欲しいですね。」

アナウンサーが話し終えた瞬間、私は、技をかけた。

そして、

「いっぽーん。決めました。金メダルです。池田、金メダル獲得しました。」

アナウンサーが立ち上がり、叫んでいる。それに続き、観客たちも立ち上がる。

私は、畳に向かって、深くお辞儀した。

私をこの舞台に連れてきてくれてありがとう。

そんな気持ちをお辞儀に込めた。

畳の外に1歩踏み出した瞬間、本来の自分へと戻る。

私は、拳を頭上にあげ、ガッツポーズした。

監督が泣いている。

監督のところに向かう。

「がんどぉぉぉく。」

私たちは、ハグを交わした。

これまでの4年間が走馬灯のように脳内に駆け巡る。

アドレナリンが出まくっているそのままの勢いで、報道陣の前まで歩みを進めた。

シャッター音が私に向けられていた。

「池田選手、初めてのオリンピックで金メダルを獲得しました。今の気持ちをお聞かせください。」

「はい。ずっと夢見た舞台でこのような結果を残すことができて、とても嬉しいです。」

「池田選手、今後の目標をお聞かせください。」

「そ、そうですね。オリンピック後は、婚活を頑張りたいと思います。」

この時の私は、異常な程のアドレナリンが出ていたのだろうか?

気づくと、そう口にしていたのだ。

場が凍るとは、このようなことを言うのか。

先程までザワザワとしていた記者たちが黙っている気がした。

「こ、婚活ですか?」

滑舌の良いアナウンサーも驚きのあまり、言葉に詰まっている。

「はい。32歳なので結婚したいなぁって。出会いがないので積極的に出会い求めたいと思います。」

私は、そのような雰囲気にも動じず、堂々と言い切った。

柔道女子48kg級オリンピック王者、次なる夢を叶える為、婚活はじめます!!!
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