柔道金メダリスト、婚活はじめました!〜最後に選ぶのは、幼馴染?元カレ?それとも婚活?

ep8

私はテレビ局から外に出た。

私はさっきの出来事をずっと考えていた。

加藤さん、何を言おうとしてたんだろ。

もしかして私を誘おうとしてた?

いやいやもう私たちは、別れたんだからそんなことないよね。

うんうん。ないない。

だって私たちあんな別れ方したのに、あり得ないよね。うん。

それにもう16年と言う月が経っているに。

私だって、もう前を向きたいと思ってる。

うん。

視線を前のほうに向けると、誰かが猛スピードで走ってくるのが目に見えた。

次第に人物が青い服を着ていることがわかった。

見覚えのある服だった。

柔道着だった。

「池田。」

「え?原。どしたの?」

チームメイトの原。

手を膝上に置きながら、必死に息を吸っている。

急いでここまで来たみたいだった。

「いやジャンボから加藤さんと取材一緒だったって聞いて心配でさ。」

彼の額には大粒の汗が光っていた。

「それでわざわざ来てくれたの?」

彼が静かに頷く。

「またお前が柔道辞めたいって言わないか心配で。」

「いやいや、いつの話よ。」

私には恥ずかしい過去があった。

高校1年生の時。

2個上の先輩加藤さんと別れた後、あまりのショックで練習に行かなくなってしまった。

原は、その時のことを言っているのだ。

「大丈夫か?なんか言われてないか?」

原は、まるで私を恋人かのような優しい表情で見てくる。

心配してくれているのだ。

「うん。挨拶しただけだよ。」

「なら良かった。」

「うん。心配してくれてありがとね。」

「おう。」

「…」

私たち2人になんとも言えない沈黙の時間がおとづれた。

プルルルルプルルルル。

それを破ったのは、原の着信音だった。

「やべ。監督だ。今から練習戻るわ。じゃ。」

彼は、画面を見た途端、どこかへと走り去っていった。

原は、いつも私の心配をしてくれる。

原は、私以上に私のことを理解しているのかもしれない。

私にとって兄みたいな存在だ。

ピコン。

私のスマホも音が鳴った。

マッチングアプリの通知だった。

おさむ 「今週の土曜日、会えますか?」

おさむさんからだった。

私の胸は、高鳴った。

ゆい「今週の土曜日、空いています。よろしくお願いします。」

気づくと、そう返信していた。

私の脳内は、次のデートのことでいっぱいになった。
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