柔道金メダリスト、婚活はじめました!〜最後に選ぶのは、幼馴染?元カレ?それとも婚活?

ep9

私は小さく息を吐く。

慣れないコテで髪を巻いた。

首を少し火傷してしまった。

慣れないネックレスのせいで少し息苦しい。

手にはリング、ブレスレット。

花柄のワンピース。

少しヒールのある靴。

この全てが、私を緊張させた。

「池田さん!」

遠くから彼がやってきた。

「池田さん、お待たせしました。」

天神、真っ黒のコーデ。

黒いロングコート。

白Tシャツに、ネイビーのパンツ、高そうな靴。

センター分けの前髪。

今日は韓国風のファッションだった。

「今日の髪型可愛いね。」

「ほ、ほんとうですか?」

「うん。ワンピースもよく似合ってる。」

「あ、ありがとうございます。」

私の体温は一気に上がった。

理さんは女性が欲しい言葉をくれる。天才だ。

私を柔道家ではなく、女性にしてくれる。

「行きましょうか。」

「はい。」

私は、彼に必死について行った。

彼の背中を持っていると、イタリアンのお店に着いた。

そのお店に入り、私たちはテーブルに着く。

「うわぁ〜!美味しそう。」

テーブルの上には、ピザ、パスタなどの料理がずらりと並べられていた。

オリンピックのために食事制限をしていた私にとっては、至福の時間だった。

イタリアなんて何年ぶりだろうか。

私はテーブルの上にある料理にしか目がいかなくなってしまった。

全神経がそこに注がれていた。

私はピザに手をかけてから、食欲というものが止まらなくなってしまった。

次々と食べる手が止まらなくなってしまった。

「すごい食べっぷりだね。」

「あ!すみません。」

理さんの声が聞こえてくるまで、夢中になって食べてしまっていたのだった。

これはデートだったのだ。

私の馬鹿。

いつもの癖でガッついてしまった。

引かれたかな?

「僕は、美味しそうに食べる池田さん、素敵だと思うよ。」

おさむさん…。

おさむさんとだったらありのままの私でいられるかもしれない。

改めて感じた瞬間だった。

プルルルルプルルルル。

おさむさんの携帯が鳴った。

「ごめん。仕事の電話だ。」

彼はスマホの画面を見て、どこかへと行ってしまった。

私は、引き続き食べ続ける。

おいしい。

こんなに美味しい食べ物食べたの久しぶりだなぁ。

しばらく時間が経ち、私のお腹は満腹になってしまった。

なかなか理さんが帰ってこない。

私は席を立ち、理さんを探しに行った。

すると、理さんをトイレの前で発見した。

「ああ。とりあえず見張っておけ。分かったな?とりあえずバレないようにな。」

彼は電話で誰かと話し込んでいるような様子だった。

しばらく実と寒さの方を見ていると、おさむさんが私に気づく。

「じゃあそういうことで。ああ。きるぞ。」

なぜか、理さんは慌てたように電話を切った。

邪魔してしまったかなぁ。

私に気を遣って電話を切ったのかもしれない。

申し訳ない気持ちになってしまった。

「す、すみません。」

「お仕事の電話ですか?」

「ええ。」

この時、私はある違和感に気づくことができなかったのだった。

あまりにも、彼のことを信用しすぎていたのかもしれない。
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